March 20, 2014 Vol. 370 No. 12
広範囲中大脳動脈領域梗塞を起こした高齢患者に対する減圧開頭術
Hemicraniectomy in Older Patients with Extensive Middle-Cerebral-Artery Stroke
E. Jüttler and Others
中大脳動脈領域の全体,またはほぼ全体に及ぶ梗塞を起こした 60 歳以下の患者では,早期の減圧開頭術によって,きわめて重度の障害リスクが上昇することなく死亡率が低下する.より高齢の患者における利益は明らかにされていない.
悪性中大脳動脈梗塞を起こした 61 歳以上(中央値 70 歳;61~82 歳)の患者 112 例を,集中治療室で保存的治療を行う群(対照群)と,減圧開頭術を行う群(減圧開頭術群)に無作為に割り付けた.割付けは発症後 48 時間以内に行われた.主要エンドポイントは,無作為化後 6 ヵ月の時点で重度の障害を伴わずに生存していること(0 [症状なし]~6 [死亡] のスコアで評価する修正 Rankin スケールで 0~4 と定義)とした.
減圧開頭術によって主要転帰が改善した.重度の障害を伴わずに生存していた患者の割合は,減圧開頭術群では 38%であったのに対し,対照群では 18%であった(オッズ比 2.91,95%信頼区間 1.06~7.49,P=0.04).この差は,手術群のほうが死亡率が低かったことに起因した(33% 対 70%).修正 Rankin スケールのスコアが 0~2(障害なく生存,または軽度の障害を伴う生存)の患者はいなかった.スコア 3(中等度の障害)は手術群の 7%と対照群の 3%,スコア 4(中等度から重度の障害 [ほとんどの身体的要求に介助を必要とする])はそれぞれ 32%と 15%,スコア 5(重度の障害)は 28%と 13%であった.感染症の頻度は減圧開頭術群のほうが高く,ヘルニアの頻度は対照群のほうが高かった.
悪性中大脳動脈梗塞を起こした 61 歳以上の患者は,減圧開頭術により重度の障害を伴わずに生存する確率が上昇した.生存者の大半は,ほとんどの身体的要求に介助を必要とした.(ドイツ研究振興協会から研究助成を受けた.DESTINY II Current Controlled Trials 番号:ISRCTN21702227)