アフリカにおける小児結核の診断と宿主 RNA の発現
Diagnosis of Childhood Tuberculosis and Host RNA Expression in Africa
S.T. Anderson and Others
小児の結核を診断する,より精度の高い検査法が求められている.アフリカの小児における結核と他の疾患との鑑別に,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の有無にかかわらず,宿主血液の転写シグネチャーを用いることができるという仮説を立てた.
結核の疑いで評価を受けようとしていた南アフリカの小児(655 例),マラウイの小児(701 例),ケニアの小児(1,599 例)の前向きコホートを研究集団とした.診断が,培養で確認された結核か,培養陰性の結核か,結核以外の疾患か,潜在性結核感染かで患児をグループ分けした.結核を他の疾患や潜在性結核感染と鑑別する診断シグネチャーは,宿主血液における RNA 発現のゲノムワイド解析によって同定した.
南アフリカとマラウイの小児(発見コホート)において,結核と他の疾患を鑑別する 51 個の転写シグネチャーを同定した.ケニアの小児(検証コホート)において,結核のシグネチャーと結核以外の疾患のシグネチャーに基づくリスクスコアは,培養で確認された結核の診断に対して,感度 82.9%(95%信頼区間 [CI] 68.6~94.3),特異度 83.6%(95% CI 74.6~92.7)であった.Mycobacterium tuberculosis が培養陰性で結核の治療を受けた患者のうち,結核の可能性がきわめて高いサブグループ,結核の可能性が高いサブグループ,結核の可能性があるサブグループでは,実際の結核有病率に関する推定との比較で,感度はそれぞれ,62.5~82.3%,42.1~80.8%,35.3~79.6%と推定された.これに対し,M. tuberculosis の DNA を分子検出する Xpert MTB/RIF 検査の感度は,培養で確認された結核症例で 54.3%(95% CI 37.1~68.6),結核の可能性がきわめて高い症例で 25.0~35.7%,結核の可能性が高い症例で 5.3~13.3%,結核の可能性がある症例で 0%と推定された.この検査の特異度は 100%であった.
アフリカの小児において,RNA 発現シグネチャーから,HIV 感染の有無にかかわらず,結核と他の疾患との鑑別に有用なデータが得られた.(欧州連合委員会貧困病プログラムほかから研究助成を受けた.)