特発性肺線維症に対するニンテダニブの有効性と安全性
Efficacy and Safety of Nintedanib in Idiopathic Pulmonary Fibrosis
L. Richeldi and Others
ニンテダニブ(nintedanib)(旧称 BIBF 1120)は,複数のチロシンキナーゼを標的とする細胞内阻害薬である.第 2 相試験では,特発性肺線維症患者に対するニンテダニブ 150 mg の 1 日 2 回投与により,肺機能低下と急性増悪が抑制されることが示唆された.
特発性肺線維症患者に対するニンテダニブ 150 mg の 1 日 2 回投与の有効性と安全性をプラセボと比較する目的で,52 週間の期間で 2 つの再現性無作為化二重盲検第 3 相試験(INPULSIS-1,INPULSIS-2)を行った.主要評価項目は,努力肺活量(FVC)の年間低下率とした.主要な副次的評価項目は,急性増悪の初回発生までの期間と,セントジョージ呼吸器質問票の総スコアのベースラインからの変化とし,いずれも 52 週にわたって評価した.
1,066 例をニンテダニブ投与またはプラセボ投与に 3:2 の割合で無作為に割り付けた. 補正後の FVC 年間変化率は,INPULSIS-1 ではニンテダニブ群 -114.7 mL に対しプラセボ群 -239.9 mL であり(差 125.3 mL/年,95%信頼区間 [CI] 77.7~172.8,P<0.001),INPULSIS-2 ではニンテダニブ群 -113.6 mL に対しプラセボ群 -207.3 mL であった(差 93.7 mL/年,95% CI 44.8~142.7,P<0.001).INPULSIS-1 では,急性増悪の初回発生までの期間に,ニンテダニブ群とプラセボ群とのあいだで有意差は認められなかったが(ニンテダニブ群のハザード比 1.15,95% CI 0.54~2.42,P=0.67),INPULSIS-2 では,ニンテダニブ群においてプラセボ群と比較して有意な利益が認められた(ハザード比 0.38,95% CI 0.19~0.77,P=0.005).ニンテダニブ群においてもっとも頻度の高かった有害事象は下痢であり,その発生率は,INPULSIS-1 ではニンテダニブ群 61.5%,プラセボ群 18.6%,INPULSIS-2 ではそれぞれ 63.2%,18.3%であった.
特発性肺線維症患者において,ニンテダニブによって FVC の低下が抑制された.このことは疾患の進行抑制と一致する.ニンテダニブは下痢と関連する頻度が高かったが,これにより試験薬を中止した患者は 5%未満であった.(Boehringer Ingelheim 社から研究助成を受けた.INPULSIS-1 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01335464,INPULSIS-2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01335477)