ADA2 の変異に関連する若年性脳卒中と血管症
Early-Onset Stroke and Vasculopathy Associated with Mutations in ADA2
Q. Zhou and Others
血縁関係のない患者 3 例において,間欠熱,若年性ラクナ梗塞およびその他の神経血管症状,網状皮斑,肝脾腫大,全身性血管障害の症候群が認められた.症候群は小児期早期に現れたため,遺伝的な原因が疑われた.
最初に症状を呈した 3 例と,罹患していないその親において,全エクソーム配列決定を行った.候補遺伝子の配列決定を,同様の表現型を呈する患者 3 例と,結節性多発動脈炎を有する若年の同胞 2 例,小血管炎を有する患者 1 例で行った.患者の検体を用いて,酵素測定,免疫ブロッティング,免疫組織化学検査,フローサイトメトリー,サイトカインプロファイリングを行った.蛋白機能の検討には,ゼブラフィッシュのモルフォリノを介したノックダウンと,ヒト皮膚内皮細胞と培養した U937 細胞の短鎖ヘアピン RNA ノックダウンを用いた.
9 例全例が,アデノシンデアミナーゼ 2(ADA2)をコードする CECR1(ネコ眼症候群染色体領域,候補 1)に劣性遺伝性変異を有し,有害であると予測された.これらの変異は,健常対照者ではまれであるか,認められなかった.6 例では 8 つの CECR1 変異が複合ヘテロ接合であった一方,結節性多発動脈炎患者と小血管炎患者の 3 例では,p.Gly47Arg 変異がホモ接合であった.患者の血中の ADA2 濃度と ADA2 特異的酵素活性度は著しく低下していた.皮膚,肝臓,脳の生検により,内皮の統合性の低下,内皮細胞活性化,炎症を特徴とする,血管障害性の変化が明らかになった.ゼブラフィッシュの ADA2 ホモログをノックダウンすると,頭蓋内出血と好中球減少が生じた.この表現型は,非変異のヒト CECR1 を同時注入すると阻害された(変異ヒト CECR1 の同時注入では阻害されなかった).共培養した内皮細胞層では,患者由来の単球によって損傷が誘発された.
CECR1 の機能喪失変異が,若年性脳卒中の再発から,全身性の血管障害・血管炎までの多様な血管・炎症表現型に関連していた.(米国国立衛生研究所の所内研究プログラムほかから研究助成を受けた.)