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December 4, 2014 Vol. 371 No. 23

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中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症の外科治療
Surgical Treatment of Moderate Ischemic Mitral Regurgitation

P.K. Smith and Others

背景

虚血性僧帽弁閉鎖不全症は,高い死亡率と合併症有病率に関連している.中等度の閉鎖不全症の外科患者に対し,冠動脈バイパス術(CABG)に僧帽弁形成術を追加することの利益は明らかにされていない.

方 法

われわれは,中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症患者 301 例を,CABG 単独群と,CABG+僧帽弁形成術(併用処置)群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,1 年の時点での,左室リモデリングの評価指標である左室収縮末期容積係数(LVESVI)とし,死亡を LVESVI でもっとも低い順位に分類する Wilcoxon の順位和検定を用いて評価した.

結 果

1 年の時点で,生存患者の平均 LVESVI は,CABG 単独群 46.1±22.4 mL/m2 体表面積,併用処置群 49.6±31.5 mL/m2 体表面積であった(ベースラインからの変化の平均はそれぞれ -9.4 mL/m2,-9.3 mL/m2).死亡率は,併用処置群 6.7%,CABG 単独群 7.3%であった(僧帽弁形成術のハザード比 0.90,95%信頼区間 0.38~2.12,P=0.81).1 年の時点での LVESVI の順位に基づく評価(死亡を含む)に,群間で有意差は認められなかった(z スコア 0.50,P=0.61).僧帽弁形成術を追加したほうが,人工心肺時間が長く(P<0.001),術後の入院期間が長く(P=0.002),神経学的イベントが多かった(P=0.03).中等度または重度の僧帽弁逆流は,併用処置群のほうが,CABG 単独群よりも少なかった(11.2% 対 31.0%,P<0.001).1 年の時点での主要な心臓・脳血管有害事象,死亡,再入院,機能状態,QOL に,群間で有意差は認められなかった.

結 論

中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症患者では,CABG に僧帽弁形成術を追加しても,左室逆リモデリングの程度は大きくならなかった.僧帽弁形成術は,中等度または重度の僧帽弁逆流の有病率がより低いことに関連したが,有害事象の増加と関連した.したがってこの試験では,1 年の時点では,CABG に僧帽弁形成術を追加することに臨床的に意味のある利益は認められなかった.長期の追跡調査により,僧帽弁逆流の有病率がより低いことが,正味の臨床的利益につながるかどうかを明らかにできる可能性がある.(米国国立衛生研究所およびカナダ健康研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00806988)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2014; 371 : 2178 - 88. )