December 25, 2014 Vol. 371 No. 26
急性外傷性脳損傷に対するプロゲステロンの超早期投与
Very Early Administration of Progesterone for Acute Traumatic Brain Injury
D.W. Wright and Others
外傷性脳損傷(TBI)は,世界的に死亡と障害の主要な原因である.プロゲステロンが神経学的転帰を改善することが,複数の実験動物モデルと,TBI 患者を対象とした 2 つの早期臨床試験で示されている.
二重盲検多施設共同臨床試験において,重度,中等度~重度,中等度の急性 TBI 患者(グラスゴー昏睡尺度スコア 4~12;スコアの範囲は 3~15 で,低いほど意識レベルが低いことを示す)を,プロゲステロンを静注する群とプラセボを静注する群に無作為に割り付け,受傷後 4 時間以内に試験治療を開始し,計 96 時間行った.有効性は,転帰が良好な患者の割合が 10 パーセントポイント上昇することと定義し,転帰は,受傷後 6 ヵ月の時点で行う二分拡張グラスゴー転帰尺度を用いて評価した.副次的評価項目は,死亡率,障害評価尺度スコアなどとした.
必要症例数 1,140 例のうち,主要評価項目における無益性により試験が中止されるまでに 882 例が無作為化された.2 群の患者背景は類似しており,患者の年齢中央値は 35 歳で,73.7%が男性,15.2%が黒人であり,損傷重症度スコア(スコアの範囲は 0~75 で,高いほど障害が大きいことを示す)の平均は 24.4 であった.もっとも頻度の高かった受傷機転は交通事故であった.転帰が良好な患者の割合に,プロゲステロン群とプラセボ群とのあいだで有意差は認められなかった(プロゲステロンの相対的利益 0.95,95%信頼区間 [CI] 0.85~1.06,P=0.35).静脈炎または血栓性静脈炎の頻度は,プロゲステロン群のほうがプラセボ群よりも高かった(相対リスク 3.03,95% CI 1.96~4.66).事前に規定したその他の安全性評価項目に群間で有意差は認められなかった.
この臨床試験では,急性 TBI 患者の転帰の改善において,プロゲステロンにプラセボを上回る利益は示されなかった.(米国国立神経疾患・脳卒中研究所ほかから研究助成を受けた.PROTECT III 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00822900)