1 型糖尿病における人工膵臓を用いた外来血糖コントロール
Outpatient Glycemic Control with a Bionic Pancreas in Type 1 Diabetes
S.J. Russell and Others
自動化された血糖管理の安全性と有効性は,制限のない外来環境下での数日間にわたる試験では検討されたことがない.
2 種類のホルモンを注入する装着型自動「人工(bionic)」膵臓を用いた 5 日間の血糖コントロール(人工膵臓期間)と,インスリンポンプを用いた 5 日間の血糖コントロール(対照期間)をランダムな順序で比較する,類似はしているが異なるデザインのクロスオーバー試験を,1 型糖尿病の成人患者 20 例を対象とした試験と,思春期患者 32 例を対象とした試験の 2 件行った.人工膵臓では,自動適応アルゴリズムが持続血糖モニターからデータを受信し,インスリンとグルカゴンの皮下注入を調整した.
成人患者では,5 日間の人工膵臓期間における血糖値の平均は 138 mg/dL(7.7 mmol/L)であり,低血糖(<70 mg/dL [3.9 mmol/L])であった時間の割合の平均は 4.8%であった.2 日目以降の持続モニタリングでの平均(±SD)血糖値は,人工膵臓期間のほうが対照期間よりも低く(133±13 mg/dL 対 159±30 mg/dL [7.4±0.7 mmol/L 対 8.8±1.7 mmol/L],P<0.001),低血糖であった時間の割合も低かった(4.1% 対 7.3%,P=0.01).思春期患者では,平均血糖値は同様に,人工膵臓期間のほうが対照期間よりも低かったが(138±18 mg/dL 対 157±27 mg/dL [7.7±1.0 mmol/L 対 8.7±1.5 mmol/L],P=0.004),低血糖であった時間の割合は 2 つの期間で同程度であった(それぞれ 6.1%と 7.6%,P=0.23).思春期患者における低血糖に対する介入の頻度の平均は,人工膵臓期間のほうが対照期間よりも低かった(1.6 日に 1 回 対 0.8 日に 1 回,P<0.001).
1 型糖尿病の成人患者と思春期患者のいずれにおいても,2 種類のホルモンを注入する装着型自動人工膵臓を用いた場合,インスリンポンプを用いた場合と比較して平均血糖値が改善し,低血糖発作の頻度が低下した.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01762059,NCT01833988)