熱帯熱マラリアおよび三日熱マラリアに対するスピロインドロン KAE609
Spiroindolone KAE609 for Falciparum and Vivax Malaria
N.J. White and Others
KAE609(旧称 NITD609,ノバルティス熱帯病研究所)は,無性/有性生殖期の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に対して用量依存性の強力な抗マラリア活性を有する,新規合成抗マラリア薬のスピロインドロンアナログである.
タイの 3 施設で,合併症のない三日熱マラリア原虫(P. vivax)によるマラリアの成人患者(10 例)と,合併症のない熱帯熱マラリア原虫によるマラリアの成人患者(11 例)の 2 つの連続するコホートにおいて,KAE609 を 30 mg/日で 3 日間投与した場合の抗マラリア効果,安全性,有害事象プロファイルを検討する第 2 相非盲検試験を行った.主要評価項目は原虫消失時間とした.
原虫消失時間の中央値は,各コホートで 12 時間であった(四分位範囲は三日熱マラリア患者で 8~16 時間,熱帯熱マラリア患者で 10~16 時間).原虫消失半減期の中央値は,三日熱マラリア患者で 0.95 時間(0.68~2.01,四分位範囲 0.85~1.14),熱帯熱マラリア患者で 0.90 時間(0.68~1.64,四分位範囲 0.78~1.07)であった.これらと比較して,東南アジアでアーテスネート(artesunate)の経口投与を受けた熱帯熱マラリア患者で,原虫消失半減期が 1 時間未満であったのは 5,076 例中わずか 19 例(<1%)であった.有害事象は 14 例(67%)で報告され,もっとも頻度が高かったのは悪心であった.有害事象は概して軽度であり,薬剤の中止にはいたらなかった.KAE609 消失の終末相半減期の平均は 20.8 時間(11.3~37.6)であり,1 日 1 回の経口投与が支持された.
合併症のない三日熱マラリアまたは熱帯熱マラリアの成人患者に,KAE609 を 30 mg/日で 3 日間投与すると,速やかに寄生虫血症が消失した.(Novartis 社ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01524341)