August 28, 2014 Vol. 371 No. 9
真性多血症の 2 つの臨床表現型
Two Clinical Phenotypes in Polycythemia Vera
J.L. Spivak and Others
真性多血症はヤヌスキナーゼ 2(JAK2 にコードされる)の V617F 変異がもたらす究極的な表現型であるが,この変異が,関与する CD34+造血幹細胞の状態(behavior)にどの程度影響を及ぼすのかは明らかにされていない.
真性多血症患者 19 例の CD34+末梢血細胞における遺伝子発現を,オリゴヌクレオチドマイクロアレイ技術を用いて解析した.この疾患の表現型の特徴は男女で異なるため,性別による交絡の可能性について補正して解析を行った.
真性多血症の患者と,患者と同性の健常者とで遺伝子発現を比較すると,男性患者では,アップレギュレートまたはダウンレギュレートされている遺伝子の数が女性患者の 2 倍であったが,男女で一致する,レギュレーションの異なる遺伝子は 102 個あった.これらの遺伝子を,目的変数なしの階層的クラスタリングによるクラス同定に用いたところ,19 例は 2 つの表現型(進行性または緩徐進行性)群に分けることができたが,年齢,好中球の JAK2 V617F アレルの比率,白血球数,血小板数,クローン性増殖に有意差は認められなかった.しかし,罹病期間,ヘモグロビン値,血栓塞栓イベント・触診できる脾腫・脾摘の頻度,化学療法歴,白血病性形質転換,生存には有意差が認められた.トップスコアペア遺伝子を用いた目的変数ありのクラスタリングで,19 例が同じ 2 つの表現型群に 100%の精度で分離されたことから,目的変数なしのクラスタリングの結果が確認された.
可能性のある交絡因子として性別を除外後に,真性多血症患者を疾患の状態によって分類するための,JAK2 V617F アレルの比率とは独立した精度の高い分子的手法が同定された.また,真性多血症の分子経路として,標準的な JAK2 経路とは別に標的療法の対象になる可能性のある,これまで認識されていなかった経路が同定された.(米国国防総省,米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)