August 28, 2014 Vol. 371 No. 9
低,中,高所得国 17 ヵ国における心血管リスクと心血管イベント
Cardiovascular Risk and Events in 17 Low-, Middle-, and High-Income Countries
S. Yusuf and Others
心血管疾患による死亡の 80%以上は低所得国と中所得国で発生していると推定されているが,その理由は不明である.
17 ヵ国(高所得国 3 ヵ国,中所得国 10 ヵ国,低所得国 4 ヵ国)の 628 の都市部および農村部から 156,424 例を登録し,臨床検査を行わずに危険因子の負担を定量化するための,妥当性の検証されている INTERHEART リスクスコア(スコアが高いほど,危険因子の負担が大きいことを示す)を用いて,心血管リスクを評価した.心血管疾患の新規発症と死亡について,参加者を平均 4.1 年追跡した.
INTERHEART リスクスコアの平均は高所得国がもっとも高く,中所得国は中間で,低所得国はもっとも低かった(P<0.001).しかし,主要心血管イベント(心血管死亡,心筋梗塞,脳卒中,心不全)の発生率は,高所得国が,中所得国,低所得国と比較して低かった(1,000 人年あたり 3.99 件に対し,5.38 件と 6.43 件;P<0.001).致死率も高所得国が低かった(高所得国 6.5%,中所得国 15.9%,低所得国 17.3%;P=0.01).都市部では,農村部と比較して危険因子の負担が高かったが,心血管イベントの発生率(1,000 人年あたり 4.83 件 対 6.25 件,P<0.001)と致死率(13.52% 対 17.25%,P<0.001)は低かった.予防的薬物療法と冠血行再建術の頻度は,高所得国が,中所得国,低所得国と比較して有意に高かった(P<0.001).
危険因子の負担は低所得国がもっとも低かったものの,主要心血管疾患の発症率と死亡率は,低所得国のほうが高所得国と比較して大幅に高かった.高所得国では危険因子の負担が高いが,危険因子がよりよく管理され,有効性の証明されている薬物療法と冠血行再建術の頻度が高いことによって軽減されている可能性がある.(公衆衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)