September 10, 2015 Vol. 373 No. 11
急性心筋梗塞の患者に対する PCI 前のシクロスポリン
Cyclosporine before PCI in Patients with Acute Myocardial Infarction
T.-T. Cung and Others
実験的研究,臨床試験のエビデンスから,シクロスポリンによって再灌流障害が軽減し,心筋梗塞サイズが減少する可能性があることが示唆されている.この試験の目的は,シクロスポリンによって臨床転帰が改善し,有害な左室リモデリングが予防されるかどうかを検討することである.
多施設共同二重盲検無作為化試験において,前胸部誘導で ST 上昇を認める急性心筋梗塞(STEMI)の患者で,発症後 12 時間以内で,責任冠動脈の完全閉塞を認め,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行予定の 970 例を,冠動脈再灌流前にシクロスポリンのボーラス投与(2.5 mg/kg 体重を静脈内投与)を行う群と,マッチさせたプラセボの投与を行う群に割り付けた.主要転帰は,全死因死亡,初回入院中の心不全の増悪,心不全による再入院,1 年の時点での有害な左室リモデリングの複合とした.有害な左室リモデリングは,左室拡張末期容積の 15%以上の増加と定義した.
シクロスポリン群の 395 例,プラセボ群の 396 例が,割り付けられた試験薬の投与を受け,1 年の時点での主要転帰について評価可能なデータが得られた.主要転帰の発生率は,シクロスポリン群 59.0%,対照群 58.1%であった(オッズ比 1.04,95%信頼区間0.78~1.39,P=0.77).シクロスポリンによって,主要転帰の各項目,および梗塞の再発,不安定狭心症,脳卒中といったその他のイベントの発生率は低下しなかった.安全性プロファイルに群間で有意差は認められなかった.
プライマリ PCI のために紹介されてきた前胸部誘導 STEMI の患者では,シクロスポリン静脈内投与を行っても,プラセボ投与と比較して臨床転帰を改善することはなく,また 1 年の時点での有害な左室リモデリングは予防されなかった.(フランス保健省と NeuroVive Pharmaceutical 社から研究助成を受けた.CIRCUS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01502774,EudraCT 登録番号 2009-013713-99)