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January 21, 2016 Vol. 374 No. 3

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TUBB8 の変異とヒト卵母細胞の減数分裂停止
Mutations in TUBB8 and Human Oocyte Meiotic Arrest

R. Feng and Others

背景

ヒトの生殖は,成熟卵母細胞と精子細胞が融合して受精卵が形成されるかどうかにかかっている.ヒト卵母細胞の成熟を停止させる遺伝的事象は明らかにされていない.

方 法

ある 4 世代家族の構成員 5 例のエクソーム解析を行った.このうち 3 例は,卵母細胞の第一減数分裂停止に起因する不妊であった.この 5 例と,同一家族の別の構成員,不妊症患者のいる他の 23 家族の構成員から採取した DNA サンプルを用いて,候補遺伝子 TUBB8 の配列決定をサンガー法により行った.ヒトの卵母細胞,初期胚,精子細胞,いくつかの体細胞組織における TUBB8 とその他すべてのβチューブリンアイソタイプの発現量を,定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法を用いて評価した.TUBB8 の変異が,αチューブリンポリペプチド 1 本とβチューブリンポリペプチド 1 本から成るヘテロ二量体(α/βチューブリンヘテロ二量体)の in vitro での形成,HeLa 細胞の微小管構築,酵母細胞の微小管動態,マウス卵母細胞とヒト卵母細胞の紡錘体形成に及ぼす影響を評価した.

結 果

24 家族のうち 7 家族の霊長類特異的遺伝子 TUBB8 から,卵母細胞の第一減数分裂停止の原因となる 7 つの変異を同定した.TUBB8 の発現は卵母細胞と初期胚に特有であり,そこで発現しているβチューブリンのほぼすべてが TUBB8 であった.TUBB8 の変異は,α/βチューブリンヘテロ二量体のシャペロン依存的な折り畳みと形成に影響を及ぼし,培養細胞で発現させると微小管の挙動を中断させ,in vivo で微小管動態を変化させ,マウス卵母細胞とヒト卵母細胞で発現させると壊滅的な紡錘体形成異常を引き起こし,成熟を停止させた.

結 論

TUBB8 の変異は,微小管の挙動,卵母細胞の減数分裂時の紡錘体形成,卵母細胞の成熟を妨害する優性阻害効果を有し,女性不妊症を引き起こす.(中国国家重点基礎研究発展計画ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 374 : 223 - 32. )