急性期脳梗塞に対する低用量アルテプラーゼ静注と標準用量アルテプラーゼ静注との比較
Low-Dose versus Standard-Dose Intravenous Alteplase in Acute Ischemic Stroke
C.S. Anderson and Others
急性期脳梗塞に対するアルテプラーゼ静注による血栓溶解療法では,投与量を標準よりも少なくすることで,頭蓋内出血のリスクが低下するとともに回復が早まる可能性がある.
非盲検の 2×2 準要因デザインを用いて,血栓溶解療法に適格であった 3,310 例(平均年齢 67 歳,アジア人 63%)を,アルテプラーゼ静注を低用量(0.6 mg/kg 体重)で行う群と,標準用量(0.9 mg/kg)で行う群に無作為に割り付けた.無作為化は発症後 4.5 時間以内に行った.主要目的は,主要転帰とした 90 日の時点での死亡または障害に関して,低用量の標準用量に対する非劣性が示されるかどうかを明らかにすることであった.死亡または障害は,修正 Rankin スケールスコア(0 [症状なし]~6 [死亡])が 2~6 と定義した.副次的目的は,中央で判定される症候性頭蓋内出血に関して,低用量の標準用量に対する優越性が示されるかどうか,また,修正 Rankin スケールスコアの順序ロジスティック回帰分析(スコアの分布の改善に関する検証)にて,低用量の非劣性が示されるかどうかを明らかにすることであった.血圧コントロールの効果も検討するため,935 例を,強化降圧療法を行う群と,ガイドラインで推奨される降圧療法を行う群にも無作為に割り付けた.
主要転帰は,低用量群では 1,607 例中 855 例(53.2%),標準用量群では 1,599 例中 817 例(51.1%)に発生した(オッズ比 1.09,95%信頼区間 [CI] 0.95~1.25,上限が非劣性マージンの 1.14 を超えた;非劣性について P=0.51).修正 Rankin スケールスコアの順序ロジスティック回帰分析では,低用量アルテプラーゼの非劣性が示された(未補正の共通オッズ比 1.00,95% CI 0.89~1.13;非劣性について P=0.04).重大な症候性頭蓋内出血は,低用量群では 1.0%,標準用量群では 2.1%に発生した(P=0.01).7 日以内に致死的イベントが発生した割合はそれぞれ 0.5%,1.5%であった(P=0.01).90 日の時点での死亡率に群間で有意差は認められなかった(それぞれ 8.5%,10.3%;P=0.07).
主にアジア人の急性期脳梗塞患者を対象としたこの試験では,90 日の時点での死亡および障害に関して,低用量アルテプラーゼの標準用量アルテプラーゼに対する非劣性は示されなかった.症候性頭蓋内出血は,低用量のほうが有意に少なかった.(オーストラリア国立保健医療研究審議会ほかから研究助成を受けた.ENCHANTED 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01422616)