October 27, 2016 Vol. 375 No. 17
プライマリケアにおける親子の家族性高コレステロール血症スクリーニング
Child–Parent Familial Hypercholesterolemia Screening in Primary Care
D.S. Wald and Others
遺伝性の若年性心血管疾患のリスクが高い人を同定するために,親子に対する家族性高コレステロール血症のスクリーニングが提唱されている.プライマリケア診療におけるこのようなスクリーニングの有効性と実施可能性を検討した.
1~2 歳児 10,095 人の定期予防接種受診時に,コレステロール値の測定と,家族性高コレステロール血症の発症に関連する遺伝子変異の検査を目的として末梢血検体を採取した.子は,コレステロール値が高く,かつ家族性高コレステロール血症の変異が認められるか 3 ヵ月後の再測定でもコレステロール値が高かった場合に,家族性高コレステロール血症スクリーニング陽性と判定した.スクリーニング陽性であった子の親は,子と同じ変異が同定された場合にスクリーニング陽性と判定し,変異が同定されなかった場合には,両親のうちコレステロール値が高かったほうの親を陽性と判定した.
コレステロール値のカットオフ値には中央値の倍数(MoM)を用い,1.53 MoM(99.2 パーセンタイルに相当)と設定した.家族性高コレステロール血症スクリーニング陽性と判定された子は 28 人(10,095 人の 0.3%,95%信頼区間 [CI] 0.2~0.4)で,内訳は,家族性高コレステロール血症の遺伝子変異保有者が 20 人,再度測定したコレステロール値 1.53 MoM 以上が 8 人であった.コレステロール値が 1.53 MoM 未満の子 17 人にも,家族性高コレステロール血症の変異が認められた.全体の変異保有率は子 273 人に 1 人(10,095 人に 37 人,95% CI 198 人に 1 人~388 人に 1 人)であった.1 回目のコレステロール値のカットオフ値を 1.35 MoM(95 パーセンタイル)としかつ変異が認められる場合,またはカットオフ値を 2 回とも 1.50 MoM(99 パーセンタイル)以上とした場合,スクリーニング陽性と判定された子は 40 人(10,095 人の 0.4%;このうち家族性高コレステロール血症の変異は 32 人に認められ,8 人には認められなかった)同定され,スクリーニング陽性と判定された親は 40 人同定された.
定期予防接種受診時に,プライマリケア診療で親子のスクリーニングを実施することは可能であった.スクリーニングを行った子 1,000 人につき,8 人(子 4 人,親 4 人)が家族性高コレステロール血症スクリーニング陽性者として同定され,したがって心血管疾患のリスクが高かった.(英国医学研究評議会から研究助成を受けた.)