重症急性呼吸促迫症候群に対する体外式膜型人工肺
Extracorporeal Membrane Oxygenation for Severe Acute Respiratory Distress Syndrome
A. Combes and Others
重症急性呼吸促迫症候群(ARDS)患者における静脈–静脈体外式膜型人工肺(ECMO)の有効性については議論が続いている.
国際臨床試験において,ARDS 患者で,動脈血酸素分圧と吸気酸素濃度の比(PaO2/FIO2)50 mmHg 未満が 3 時間を超える,PaO2/FIO2 80 mmHg 未満が 6 時間を超える,動脈血 pH 7.25 未満で動脈血二酸化炭素分圧 60 mmHg 以上が 6 時間を超えるという 3 つの基準のいずれかに当てはまる最重症例を,静脈–静脈 ECMO をただちに施行する群(ECMO 群)と従来治療を継続する群(対照群)に無作為に割り付けた.対照群で難治性低酸素血症を認めた患者は,ECMO へのクロスオーバーを可能とした.60 日死亡率を主要評価項目とした.
60 日の時点までに ECMO 群 124 例中 44 例(35%)と対照群 125 例中 57 例(46%)が死亡した(相対リスク 0.76,95%信頼区間 [CI] 0.55~1.04,P=0.09).対照群では 35 例(28%)が無作為化後平均(±SD)6.5±9.7 日の時点で ECMO にクロスオーバーし,このうち 20 例(57%)が死亡した.ECMO 群では,対照群と比較して輸血を要した出血の頻度が高く(46% 対 28%,絶対リスク差 18 パーセントポイント,95% CI 6~30),重度の血小板減少の頻度が高く(27% 対 16%,絶対リスク差 11 パーセントポイント,95% CI 0~21),脳梗塞の頻度が低く(0 例 対 5%,絶対リスク差 -5 パーセントポイント,95% CI -10~-2),そのほかの合併症の頻度には群間で有意差は認められなかった.
最重症の ARDS 患者において,ECMO を用いた場合の 60 日死亡率は,従来の人工呼吸管理を行い救済治療として ECMO を用いる戦略と比較して有意には低下しなかった.(Direction de la Recherche Clinique et du Développement,フランス保健省から研究助成を受けた.EOLIA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01470703)