切除可能な肺癌に対する PD-1 阻害薬による術前補助療法
Neoadjuvant PD-1 Blockade in Resectable Lung Cancer
P.M. Forde and Others
プログラム死 1(PD-1)蛋白阻害抗体は進行した非小細胞肺癌(NSCLC)患者の生存期間を延長させるが,切除可能な NSCLC については検討されておらず,この 10 年間で治療にほとんど進歩がみられていない.
未治療の外科的切除可能な早期(I 期,II 期,または IIIA 期)NSCLC の成人患者を対象としたパイロット試験で,PD-1 阻害薬ニボルマブを術前に 2 回投与した.ニボルマブ(3 mg/kg 体重)は 2 週間隔で静脈内投与し,手術は初回投与の約 4 週間後に計画した.主要評価項目は安全性と実施可能性とした.腫瘍病理学的奏効,プログラム死リガンド 1(PD-L1)の発現,腫瘍の遺伝子変異量,変異に関連したネオ抗原特異的 T 細胞応答も評価した.
ニボルマブによる術前補助療法の副作用プロファイルは忍容可能であり,手術の遅延に関連しなかった.摘出した腫瘍 21 個のうち 20 個で完全切除が得られた.20 個中 9 個(45%)で病理学的著効が得られた.奏効は PD-L1 陽性腫瘍と PD-L1 陰性腫瘍の両方で認められた.病理学的奏効と治療前の腫瘍の遺伝子変異量とのあいだに有意な相関が認められた.腫瘍と末梢血の両方で検出された T 細胞クローンの数は,評価した 9 例のうち 8 例で PD-1 阻害後に全身で増加した.病理学的評価で完全奏効が認められた原発腫瘍に由来する変異に関連したネオ抗原特異的 T 細胞クローンが,治療後 2~4 週の時点で,末梢血中で急速に増殖した.これらのクローンの一部は,ニボルマブ投与前には検出されていなかった.
ニボルマブによる術前補助療法は,副作用が少なく,手術を遅延させることもなく,切除した腫瘍の 45%で病理学的著効が得られた.腫瘍の遺伝子変異量は,PD-1 阻害薬で得られる病理学的奏効の予測因子であった.治療により,末梢血中の変異に関連したネオ抗原特異的 T 細胞クローンの増殖が誘導された.(がん研究所–スタンドアップトゥキャンサーほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02259621)