September 20, 2018 Vol. 379 No. 12
3 年間のメディケア医療費節減分分配プログラム後のメディケア支出
Medicare Spending after 3 Years of the Medicare Shared Savings Program
J.M. McWilliams and Others
説明責任を果たせる医療機関(ACO)として自発的なメディケア医療費節減分分配プログラム(MSSP)に参加する医療提供者には,メディケア患者に対する支出を抑制すると同時に,一連の質評価指標上で好成績を達成するためのインセンティブが存在する.プログラムに参加した ACO によって達成された初期の節減額がどの程度増大しているのか,その後にプログラムに参加した ACO ではどの程度再現されているのかはほとんどわかっていない.医師グループの ACO には,病院組織に統合されている ACO と比較して,支出を抑制するための強いインセンティブが存在する.
2009~15 年の出来高払い方式のメディケア請求データを用いて difference-in-differences 分析を行い,MSSP 参加前後の,ACO における患者に対するメディケア支出の変化と,MSSP に参加していない医療提供者の治療を受けた地域患者(対照群)に対する同時期の支出の変化とを比較した.2012 年,2013 年,2014 年に MSSP に参加した病院統合 ACO と医師グループ ACO を分けて,差分変化(参加前からの変化の群間差)を推定した.
医師グループ ACO において,MSSP への参加は支出減少の差に関連していた.医師グループ ACO における支出減少は,プログラム参加期間が長くなるほど大きくなり,病院統合 ACO における支出減少と比較して有意に大きかった.2015 年までの患者 1 人あたりのメディケア支出額の平均差分変化は,2012 年に参加した医師グループ ACO で -474 ドル(参加前の平均の -4.9%,P<0.001),2013 年に参加した医師グループ ACO で -342 ドル(-3.5%,P<0.001),2014 年に参加した医師グループ ACO で -156 ドル(-1.6%,P=0.009)であった.これに対応する病院統合 ACO の平均差分変化は -169 ドル(P=0.005),-18 ドル(P=0.78),88 ドル(P=0.14)であり,いずれも医師グループ ACO と比較して有意に小さかった(P<0.001).2015 年に,医師グループ ACO における支出減少によってメディケア支出額は正味で 2 億 5,640 万ドルの節減となったのに対し,病院統合 ACO における支出減少は報酬の支払いによって相殺された.
MSSP の 3 年後に,医師グループによる医療費節減分分配契約への参加はメディケア支出の節減に関連し,その額は研究期間中に増大したが,病院統合 ACO では,同期間に(平均して)節減はみられなかった.(米国国立老化研究所から研究助成を受けた.)