October 4, 2018 Vol. 379 No. 14
心不全,洞調律,冠疾患を有する患者におけるリバーロキサバン
Rivaroxaban in Patients with Heart Failure, Sinus Rhythm, and Coronary Disease
F. Zannad and Others
心不全はトロンビン関連経路の活性化に関連しており,その活性化は予後不良を予測する.慢性心不全が増悪している,基礎疾患に冠動脈疾患を有する患者に対する第 Xa 因子阻害薬リバーロキサバンの投与により,トロンビン産生量が減少し転帰が改善するという仮説を立てた.
二重盲検無作為化試験で,左室駆出率 40%以下で,冠動脈疾患を有し,血漿中のナトリウム利尿ペプチド濃度が高く,心房細動を発症していない慢性心不全患者 5,022 例を,心不全増悪のエピソードに対する治療後,標準治療に加えてリバーロキサバン 2.5 mg を 1 日 2 回投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要有効性転帰は,全死因死亡,心筋梗塞,脳梗塞の複合とした.主な安全性転帰は,致死的出血または永続的障害を引き起こす可能性のある重要な部位への出血とした.
追跡期間中央値 21.1 ヵ月のあいだに,主要転帰は,リバーロキサバン群 2,507 例中 626 例(25.0%),プラセボ群 2,515 例中 658 例(26.2%)に発生した(ハザード比 0.94,95%信頼区間 [CI] 0.84~1.05,P=0.27).全死因死亡率に,リバーロキサバン群とプラセボ群とのあいだで有意差は認められなかった(それぞれ 21.8%と 22.1%,ハザード比 0.98,95% CI 0.87~1.10).主な安全性転帰は,リバーロキサバンを服用した 18 例,プラセボを服用した 23 例に認められた(ハザード比 0.80,95% CI 0.43~1.49,P=0.48).
慢性心不全が増悪しており,左室駆出率が低く,冠動脈疾患を有し,心房細動を発症していない患者に対するリバーロキサバン 2.5 mg の 1 日 2 回投与は,プラセボと比較して,死亡,心筋梗塞,脳梗塞の発生率の有意な低下に関連しなかった.(Janssen Research and Development 社から研究助成を受けた.COMMANDER HF 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01877915)