November 29, 2018 Vol. 379 No. 22
注意欠如・多動性障害と入学月
Attention Deficit–Hyperactivity Disorder and Month of School Enrollment
T.J. Layton and Others
同一学年のコホート内で,より年齢の低い小児は,より高い小児に比べて,行動の違いから注意欠如・多動性障害(ADHD)の診断を受けやすい可能性があり,行動の違いは,年齢の低さではなく ADHD が原因とみなされている可能性がある.米国の大半の州は,公立学校(幼稚園併設)の入学年齢に任意の基準を設けている.したがって,同じ学年のなかで,誕生日が基準日に近い児は年齢が約 1 歳違う可能性がある.
大規模な保険データベースの 2007~15 年のデータを用いて,幼稚園入園には 9 月 1 日までに 5 歳になっていることを要件とする州とそうでない州において,8 月生まれの児と 9 月生まれの児とで ADHD の診断割合を比較した.ADHD の診断は,『国際疾病分類第 9 版(International Classification of Diseases, 9th Revision)』の診断コードをもとに特定した.また,処方記録を用いて,基準日を 9 月 1 日とする州とそうでない州において,8 月生まれの児と 9 月生まれの児とで ADHD の治療割合を比較した.
研究対象集団は 2007~09 年に生まれた米国全州の 407,846 人の小児とし,2015 年 12 月まで追跡した.9 月 1 日を基準日とする州の児における請求に基づく ADHD の診断割合は,8 月生まれの児で 10,000 人あたり 85.1(36,319 人に 309 例,95%信頼区間 [CI] 75.6~94.2),9 月生まれの児で 10,000 人あたり 63.6(35,353 人に 225 例,95% CI 55.4~71.9)であり,絶対差は 10,000 人あたり 21.5(95% CI 8.8~34.0)であった.9 月 1 日を基準日としない州における絶対差は 10,000 人あたり 8.9(95% CI -14.9~20.8)であった.ADHD の治療割合は,8 月生まれの児で 10,000 人あたり 52.9(36,319 人に 192 例,95% CI 45.4~60.3),9 月生まれの児で 10,000 人あたり 40.4(35,353 人に 143 例,95% CI 33.8~47.1)であり,絶対差は 10,000 人あたり 12.5(95% CI 2.43~22.4)であった.これらの差は,他の月のあいだの比較では認められず,入園の基準日を 9 月としない州でも認められなかった.また,9 月 1 日を基準日とする州では,8 月生まれの児と 9 月生まれの児とのあいだで喘息,糖尿病,肥満の発生率に有意差は認められなかった.
幼稚園入園の基準日を 9 月 1 日とする州では,ADHD の診断割合と治療割合は,8 月生まれの児のほうが 9 月生まれの児よりも高かった.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)