December 13, 2018 Vol. 379 No. 24
同種移植後の再発 AML 細胞の免疫逃避
Immune Escape of Relapsed AML Cells after Allogeneic Transplantation
M.J. Christopher and Others
急性骨髄性白血病(AML)の地固め療法として同種造血幹細胞移植がもたらす利益の一部は,免疫を介した移植片対白血病効果によるものである.われわれは,同種移植によってかかる免疫を介した選択圧は,再発疾患における腫瘍進展の特徴的なパターンを引き起こしている可能性があるという仮説を立てた.
造血幹細胞移植(HLA の適合した兄弟姉妹,HLA の適合した血縁関係のないドナー,HLA 不適合の血縁関係のないドナーからの移植)後に再発した 15 例と化学療法後に再発した 20 例から,AML での初回受診時と再発時に採取したペア検体について強化エクソームシーケンシングを行った.これらの検体の一部と検証のための別の検体について RNA シーケンシングとフローサイトメトリーを行った.
エクソームシーケンシングでは,移植後の再発で観察された変異の獲得および喪失のスペクトラムは,化学療法後の再発で観察されたものと同様であった.具体的には,移植後の再発は,免疫関連遺伝子のこれまで知られていない AML 特異的変異の獲得や構造変化との関連は認められなかった.一方,移植後の再発時に採取した検体の RNA シーケンシングでは,主要組織適合複合体(MHC)クラス II 遺伝子(HLA-DPA1,HLA-DPB1,HLA-DQB1,HLA-DRB1)の発現量が初回受診時に採取したペア検体の 1/12~1/3 に下方制御されるなど,獲得免疫や自然免疫に関わる経路の制御異常が明らかになった.フローサイトメトリーと免疫組織化学的解析により,移植後に再発した 34 例中 17 例で,再発時の MHC クラス II の発現量が低いことが確認された.知見から,インターフェロンγ治療により,in vitro で AML 芽球の表現型が速やかに復元されることが示唆された.
移植後の AML 再発は,免疫関連遺伝子の再発特異的変異の獲得との関連は認められなかった.しかし,抗原提示に関わる,MHC クラス II 遺伝子の下方制御などの免疫機能に影響を及ぼしうる経路の制御異常との関連が認められた.これらのエピジェネティックな変化は適切な治療法で逆転させることができる可能性がある.(米国国立がん研究所ほかから研究助成を受けた.)