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August 30, 2018 Vol. 379 No. 9

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インヒビターを保有しない血友病 A 患者に対するエミシズマブの定期投与
Emicizumab Prophylaxis in Patients Who Have Hemophilia A without Inhibitors

J. Mahlangu and Others

背景

エミシズマブは,活性型第 IX 因子と第 X 因子の橋渡しをするバイスペシフィックモノクローナル抗体であり,欠乏している活性型第 VIII 因子の機能を代替して,止血能を回復する.第 3 相多施設共同試験で,第 VIII 因子インヒビターを保有しない血友病 A 患者に対するエミシズマブの定期投与を検討した.

方 法

出血時に第 VIII 因子の補充を受けている 12 歳以上の被験者を,エミシズマブを 1.5 mg/kg 体重/週の維持用量で皮下投与する群(A 群),3.0 mg/kg で 2 週ごとに皮下投与する群(B 群),定期投与を行わない群(C 群)に,2:2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は治療を要する出血が発生した割合の差とした(A 群 対 C 群,B 群 対 C 群).第 VIII 因子の定期補充を受けていた被験者にはエミシズマブを 1.5 mg/kg/週の維持用量で投与し(D 群),過去に非介入研究に参加したことのある被験者を対象に,被験者内比較を行った.

結 果

152 例を登録した.年間出血率は A 群で 1.5 件(95%信頼区間 [CI] 0.9~2.5),B 群で 1.3 件(95% CI 0.8~2.3)であったのに対し,C 群では 38.2 件(95% CI 22.9~63.8)であり,年間出血率は A 群では 96%の低下,B 群では 97%の低下となった(いずれの比較も P<0.001).A 群の 56%と B 群の 60%では治療を要する出血が発生しなかったのに対し,C 群では全例で発生した.48 例に行った被験者内比較では,エミシズマブの定期投与は,それまで受けていた第 VIII 因子の定期補充と比較して,年間出血率を 68%低下させた(P<0.001).もっとも頻度が高かった有害事象は,低グレードの注射部位反応であった.血栓症や血栓性微小血管症は認めず,抗薬物抗体の発生,新規の第 VIII 因子インヒビターの発生もなかった.

結 論

インヒビターを保有しない血友病 A 患者において,週 1 回または 2 週ごとのエミシズマブの定期皮下投与により,定期投与を行わない場合と比較して出血率は有意に低下し,定期投与を行った被験者の半数以上では治療を要する出血が発生しなかった.被験者内比較では,エミシズマブ療法により,それまで受けていた第 VIII 因子の定期補充と比較して,出血率が有意に低下した.(F. Hoffmann–La Roche 社,Chugai Pharmaceutical 社から研究助成を受けた.HAVEN 3 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02847637)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2018; 379 : 811 - 22. )