August 30, 2018 Vol. 379 No. 9
結核治療後の再発を予測する細菌因子
Bacterial Factors That Predict Relapse after Tuberculosis Therapy
R. Colangeli and Others
薬剤感受性結核患者のうち,6 ヵ月間の第一選択療法後に再発する割合は約 5%,4 ヵ月間の短期療法後に再発する割合は約 20%である.われわれは,治療後に再発または治癒した患者の,治療前の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)分離株を分析することによって,薬剤の標準耐性限界値を超えない最小発育阻止濃度(MIC)と治療後の再発リスクとの相関を明らかにできると仮定した.
結核試験コンソーシアムによる 22 試験のデータ(開発コホート)を用いて,イソニアジドとリファンピン(rifampin)の標準耐性限界値(イソニアジド 0.1 μg/mL,リファンピン 1.0 μg/mL)を超えない MIC を算出するため,再発例と治癒例の分離株を評価した.この分析結果を臨床データ,放射線学的データ,臨床検査データと組み合わせて再発予測モデルを作成し,DMID 01-009 試験のデータ(検証コホート)を解析することで妥当性を検証した.
開発コホートでは,耐性限界値を超えないイソニアジドの平均(±SD)MIC は,再発群で 0.0334±0.0085 μg/mL,治癒群で 0.0286±0.0092 μg/mL であり,再発群が 1.17 倍高値であることが示された(P=0.02).リファンピンについてはそれぞれ 0.0695±0.0276 μg/mL と 0.0453±0.0223 μg/mL であり,再発群が 1.53 倍高値であることが示された(P<0.001).MIC がより高値であることと再発との関連は,群間で有意差のある他の因子を含めた多変量解析においても認められた.これらの MIC に基づく再発の受信者動作特性(ROC)曲線解析において,曲線下面積(AUC)は 0.779 であった.開発コホートでは,MIC を含む多変量モデルの AUC は 0.875 であった.検証コホートでは,MIC 単独の場合,または MIC と他の患者特性を組み合わせた場合でも再発が予測でき,AUC 値はそれぞれ 0.964 と 0.929 であった.相互に妥当性を検証する解析で感度 75.0%を達成するようにイソニアジドとリファンピンの MIC にモデルスコアを用いたところ,再発は開発コホートでは特異度 76.5%で予測され,検証コホートでは感度 70.0%,特異度 100%で予測された.
治療前の結核菌分離株で,標準耐性限界値を超えないイソニアジドまたはリファンピンの MIC の低下を評価したところ,MIC がより高値であることは,より低値であることと比較して再発リスクがより高いことに関連した.(米国国立アレルギー・感染症研究所から研究助成を受けた.)