心臓植込み型デバイスの感染を予防するための抗菌エンベロープ
Antibacterial Envelope to Prevent Cardiac Implantable Device Infection
K.G. Tarakji and Others
心臓植込み型デバイス(CIED)留置後の感染は,相当な障害や死亡を伴う.そのような感染を防ぐための予防戦略については,術前の抗菌薬投与を除き,エビデンスが限られている.
無作為化比較臨床試験で,吸収性の抗菌薬溶出エンベロープの,CIED 植込みに関連する感染の発症率低下における安全性と有効性を評価した.CIED ポケットの再作成,ジェネレータ交換,両室ペーシング機能付き植込み型除細動器の初回留置またはシステムアップグレードが行われる患者を,エンベロープ使用群と非使用群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.すべての患者に対し,感染予防のための標準治療を行った.主要エンドポイントは,CIED 植込み術後 12 ヵ月以内のシステム抜去,ポケット再作成等の侵襲的手技,感染再発による長期抗菌薬療法,死亡のいずれかにいたる感染とした.安全性に関する副次的エンドポイントは,12 ヵ月以内の手術またはシステムに関連する合併症とした.
6,983 例が無作為化され,3,495 例がエンベロープ群,3,488 例が対照群に割り付けられた.主要エンドポイントは,エンベロープ群の 25 例と対照群の 42 例に発生した(12 ヵ月の時点での Kaplan–Meier 推定イベント発生率はそれぞれ 0.7%と 1.2%,ハザード比 0.60,95%信頼区間 [CI] 0.36~0.98,P=0.04).安全性エンドポイントは,エンベロープ群の 201 例と対照群の 236 例に発生した(12 ヵ月の時点での Kaplan–Meier 推定イベント発生率はそれぞれ 6.0%と 6.9%,ハザード比 0.87,95% CI 0.72~1.06,非劣性の P<0.001).追跡期間は平均(±SD)で 20.7±8.5 ヵ月であった.全追跡期間を通して,重大な CIED 関連感染は,エンベロープ群の 32 例と対照群の 51 例に発生した(ハザード比 0.63,95% CI 0.40~0.98).
抗菌エンベロープの補助的使用により,標準的な感染予防戦略のみを行った場合と比較して,合併症の発生率は上昇することなく,重大な CIED 感染の発生率が有意に低下した.(メドトロニック社から研究助成を受けた.WRAP-IT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02277990)