PIK3CA 変異陽性ホルモン受容体陽性進行乳癌に対するアルペリシブ
Alpelisib for PIK3CA-Mutated, Hormone Receptor–Positive Advanced Breast Cancer
F. André and Others
ホルモン受容体(HR)陽性ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)陰性乳癌患者の約 40%に PIK3CA 変異が生じている.PI3Kα特異的阻害薬アルペリシブ(alpelisib)は,初期の試験で抗腫瘍活性を示している.
無作為化第 3 相試験で,内分泌療法歴のある HR 陽性 HER2 陰性進行乳癌患者を対象に,アルペリシブ(300 mg/日)+フルベストラント(500 mg を 28 日ごとに投与,15 日目にも 1 回投与)と,プラセボ+フルベストラントとを比較した.腫瘍組織の PIK3CA 変異状態に基づいて,患者を 2 つのコホートに組み入れた.主要評価項目は,PIK3CA 変異陽性癌のコホートにおける,試験担当医師が評価した無増悪生存期間とした.PIK3CA 変異陰性癌のコホートにおいても無増悪生存期間を解析した.副次的評価項目は全奏効率,安全性などとした.
572 例が無作為化され,うち 341 例で腫瘍組織に PIK3CA 変異が確認された.PIK3CA 変異陽性癌患者のコホートでは,追跡期間中央値 20 ヵ月の時点での無増悪生存期間がアルペリシブ+フルベストラント群で 11.0 ヵ月(95%信頼区間 [CI] 7.5~14.5)であったのに対し,プラセボ+フルベストラント群では 5.7 ヵ月(95% CI 3.7~7.4)であり(病勢進行または死亡のハザード比 0.65,95% CI 0.50~0.85,P<0.001),PIK3CA 変異陰性癌患者のコホートでは,ハザード比は 0.85(95% CI 0.58~1.25;ハザード比の事後確率<1.00,79.4%)であった.PIK3CA 変異陰性癌コホートの患者全例における全奏効率は,アルペリシブ+フルベストラント群のほうがプラセボ+フルベストラント群よりも高く(26.6% 対 12.8%),このコホートで測定可能病変を有する患者では,全奏効率はそれぞれ 35.7%と 16.2%であった.集団全体でとくに頻度の高かったグレード 3 または 4 の有害事象は,高血糖(アルペリシブ+フルベストラント群 36.6% 対 プラセボ+フルベストラント群 0.7%)と発疹(9.9% 対 0.3%)であった.グレード 3 の下痢がアルペリシブ+フルベストラント群の 6.7%に発現したのに対し,プラセボ+フルベストラント群では 0.3%であり,グレード 4 の下痢は報告されなかった.有害事象によりアルペリシブまたはプラセボを中止した患者の割合は,それぞれ 25.0%と 4.2%であった.
内分泌療法歴のある,PIK3CA 変異陽性 HR 陽性 HER2 陰性進行乳癌患者において,アルペリシブ+フルベストラントによる治療は無増悪生存期間を延長させた.(ノバルティス ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.SOLAR-1 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02437318)