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July 18, 2019 Vol. 381 No. 3

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全員対象の検査と治療が新規 HIV 感染に及ぼす影響 ― HPTN 071(PopART)試験
Effect of Universal Testing and Treatment on HIV Incidence — HPTN 071 (PopART)

R.J. Hayes and Others

背景

全員を対象とする検査と治療戦略は,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の新規発生を抑制するアプローチとして可能性があるが,これまでの試験の結果は一貫していない.

方 法

2013~18 年に行ったコミュニティ無作為化試験 HPTN 071(PopART)試験で,ザンビアと南アフリカの 21 のコミュニティ(総人口約 100 万人)を,A 群(複合予防介入と全員対象の抗レトロウイルス療法 [ART]),B 群(複合予防介入と地域のガイドラインに基づいて行う [2016 年以降は全員対象] ART),C 群(標準ケア)に無作為に割り付けた.予防介入には,地域の医療従事者が提供する在宅での HIV 検査が含まれ,この従事者は HIV のケアへの連携と ART アドヒアランスの支援も行った.主要評価項目である 12~36 ヵ月のあいだの新規 HIV 感染は,無作為に抽出した,コミュニティあたり約 2,000 人の成人(18~44 歳)の住民コホートで測定した.HIV 陽性であった全参加者でウイルス抑制(HIV RNA が 400 コピー/mL 未満)を 24 ヵ月の時点で評価した.

結 果

全体で 48,301 人が組み入れられた.ベースラインでの HIV 陽性者の割合は各群 21%または 22%であった.12~36 ヵ月のあいだに,39,702 人年で 553 件の新規 HIV 感染が観察された(100 人年あたり 1.4 件,女性 1.7 件,男性 0.8 件).C 群と比較した補正率比は A 群では 0.93(95%信頼区間 [CI] 0.74~1.18,P=0.51),B 群では 0.70(95% CI 0.55~0.88,P=0.006)であった.HIV 陽性の参加者のうち 24 ヵ月の時点でウイルスが抑制されていた割合は,A 群 71.9%,B 群 67.5%,C 群 60.2%であった.コミュニティ内の HIV 陽性の成人が 36 ヵ月の時点で ART を受けている割合は,A 群 81%,B 群 80%と推定された.

結 論

複合予防介入と地域のガイドラインに基づいて行う ART により,HIV 感染の新規発生は標準ケアと比較して 30%減少した.全員対象の ART に効果がなかったのは予期せぬことであり,ウイルス抑制に関するデータと一致しなかった.この試験の環境では,全員を対象とする検査と治療により,住民レベルでの HIV 感染の新規発生が抑制された.(米国国立アレルギー感染症研究所ほかから研究助成を受けた.HPTN 071 [PopArt] 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01900977)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 381 : 207 - 18. )