April 16, 2020 Vol. 382 No. 16
ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症の治療におけるインクリシラン
Inclisiran for the Treatment of Heterozygous Familial Hypercholesterolemia
F.J. Raal and Others
家族性高コレステロール血症は,低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値上昇と早発性アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスクが高いことが特徴である.前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン 9 型(PCSK9)を標的とするモノクローナル抗体は,LDL コレステロール値を 50%以上低下させることが示されているが,2~4 週間ごとに投与する必要がある.第 2 相試験では,ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症の成人において,低分子干渉 RNA であるインクリシラン(inclisiran)の年 2 回の注射は,PCSK9 の肝臓での合成を阻害することが示された.
第 3 相二重盲検試験で,ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症の成人 482 例を,インクリシラン ナトリウム(300 mg)の皮下注射群と,マッチさせたプラセボ群に 1:1 の割合で無作為に割り付け,1,90,270,450 日目に投与した.主要エンドポイントは,510 日目の時点での LDL コレステロール値のベースラインからの変化量(%)と,90 日目から 540 日目にかけての LDL コレステロール値の,時間で調整したベースラインからの変化量(%)の 2 項目とした.
患者の年齢の中央値は 56 歳,47%は男性であり,ベースライン時の LDL コレステロール値の平均は 153 mg/dL であった.510 日目における LDL コレステロール値の変化量は,インクリシラン群が 39.7%の低下(95%信頼区間 [CI] -43.7~-35.7),プラセボ群が 8.2%の上昇(95% CI 4.3~12.2)であり,群間差は -47.9 パーセントポイント(95% CI -53.5~-42.3,P<0.001)であった.90 日目から 540 日目にかけての LDL コレステロール値の時間平均変化量は,インクリシラン群が 38.1%の低下(95% CI -41.1~-35.1),プラセボ群が 6.2%の上昇(95% CI 3.3~9.2)であり,群間差は -44.3 パーセントポイント(95% CI -48.5~-40.1,P<0.001)であった.家族性高コレステロール血症のあらゆる遺伝子型で LDL コレステロール値の一貫した低下が認められた.有害事象と重篤な有害事象は 2 群で同程度であった.
ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症の成人のうち,インクリシランの投与を受けた患者は,プラセボの投与を受けた患者よりも LDL コレステロール値が有意に低く,インクリシランは低頻度の投与レジメンが可能であり,安全性プロファイルは容認できるものであった.(メディシンズ社から研究助成を受けた.ORION-9 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03397121)