October 15, 2020 Vol. 383 No. 16
呼吸不全を伴う重症 Covid-19 のゲノムワイド関連解析
Genomewide Association Study of Severe Covid-19 with Respiratory Failure
The Severe Covid-19 GWAS Group
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)に感染した患者の臨床経過にはかなりのばらつきがある.ゲノムワイド関連解析により,Covid-19 の進展に関与する可能性のある遺伝因子を同定できる可能性がある.
欧州の SARS-CoV-2 パンデミックの中心地であったイタリアとスペインの 7 つの病院で,Covid-19 と重症疾患(呼吸不全と定義)を有する患者 1,980 例を含む,ゲノムワイド関連解析を行った.クオリティコントロールを行い,集団の外れ値を除外後,イタリアの患者 835 例と対照 1,255 例,スペインの患者 775 例と対照 950 例を最終解析の対象とした.計 8,582,968 個の一塩基多型を解析し,この 2 つの症例対照パネルのメタ解析を行った.
2 つの症例対照パネルのメタ解析により,遺伝子座 3p21.31 の rs11385942 と遺伝子座 9q34.2 の rs657152 に,相互に再現性のある関連を検出した(オッズ比 1.77,95%信頼区間 [CI] 1.48~2.11,P=1.15×10-10;オッズ比 1.32,95% CI 1.20~1.47,P=4.95×10-8).これらはゲノム全体で有意であった(P<5×10-8).遺伝子座 3p21.31 では, 関連シグナルは SLC6A20, LZTFL1, CCR9, FYCO1, CXCR6, XCR1 の 6 遺伝子に及んでいた.遺伝子座 9q34.2 では,関連シグナルは ABO 血液型遺伝子座に一致し,この患者集団では血液型別の解析により,A 型は他の血液型に比べてリスクが高く(オッズ比 1.45,95% CI 1.20~1.75,P=1.48×10-4),O 型は他の血液型に比べて保護効果があることが示された(オッズ比 0.65,95% CI 0.53~0.79,P=1.06×10-5).
呼吸不全を伴う Covid-19 患者において 3p21.31 の遺伝子クラスターを感受性遺伝子座として同定し,ABO 血液型が関与している可能性を確認した.(Stein Erik Hagen 氏ほかから研究助成を受けた.)