October 22, 2020 Vol. 383 No. 17
成人のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対するダサチニブとブリナツモマブの併用
Dasatinib–Blinatumomab for Ph-Positive Acute Lymphoblastic Leukemia in Adults
R. Foà and Others
フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)患者の転帰は,チロシンキナーゼ阻害薬の使用により改善している.分子遺伝学的寛解が主な治療目標である.
新たに Ph 陽性 ALL と診断された成人(年齢の上限なし)を対象に,一次治療の第 2 相単群試験を行った.ダサチニブ+グルココルチコイドを投与後,ブリナツモマブを 2 サイクル投与した.主要エンドポイントは,治療後の骨髄における分子遺伝学的奏効の持続とした.
組み入れられた 63 例(年齢中央値 54 歳,範囲 24~82)のうち,98%で血液学的完全寛解が得られた.ダサチニブによる寛解導入療法が終了した時点(85 日目)で,患者の 29%で分子遺伝学的奏効が得られた.この割合は,ブリナツモマブの 2 サイクル投与後に 60%まで上昇し,投与サイクル数の増加に伴いさらに上昇した.追跡期間中央値 18 ヵ月の時点で,全生存率は 95%,無病生存率は 88%であり,無病生存率は,IKZF1 欠失に加えて他の遺伝子異常(CDKN2A か CDKN2B,または PAX5,あるいはその両方の異常)を有する(すなわち IKZF1plus)患者でより低かった.寛解導入療法中に微小残存病変が増加した 6 例で ABL1 の変異が検出されたが,いずれもブリナツモマブにより消失した.再発は 6 件発生した.全体で,グレード 3 以上の有害事象は 21 件認められた.24 例が同種造血幹細胞移植を受け,移植関連死が 1 例(4%)あった.
Ph 陽性 ALL を有する成人に対して,分子標的・免疫療法戦略に基づき,化学療法を行わずにダサチニブとブリナツモマブによる寛解導入・地固め療法を行う一次治療は,分子遺伝学的奏効割合と生存率が高く,グレード 3 以上の毒性が少ないことに関連した.(イタリア癌研究協会ほかから研究助成を受けた.GIMEMA LAL2116 D-ALBA 試験:EudraCT 登録番号 2016-001083-11,ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02744768)