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October 22, 2020 Vol. 383 No. 17

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好酸球性胃腸炎および好酸球性十二指腸炎に対する抗 Siglec-8 抗体
Anti–Siglec-8 Antibody for Eosinophilic Gastritis and Duodenitis

E.S. Dellon and Others

背景

好酸球性胃腸炎と好酸球性十二指腸炎は,消化管粘膜の好酸球増多,慢性症状,QOL の低下,適切な治療法がないのが特徴である.マスト細胞の活性がその病因に寄与している可能性がある.AK002(リレンテリマブ [lirentelimab])は,好酸球を減少させマスト細胞を阻害する抗 Siglec-8 抗体であり,動物モデルでは,好酸球性胃腸炎と好酸球性十二指腸炎の治療薬としての可能性を示している.

方 法

第 2 相試験で,症候性の好酸球性胃腸炎,好酸球性十二指腸炎,またはその両方を有する成人を,低用量 AK002 群,高用量 AK002 群,プラセボ群に 1:1:1 の割合で無作為に割り付け,月 1 回,計 4 回静注した.主要エンドポイントは,最終投与後 2 週の時点での消化管の好酸球数のベースラインからの変化率とした.統計的検出力を最大にするため,このエンドポイントの評価は,AK002 の 2 群を統合した群とプラセボ群との比較で行った.副次的エンドポイントは,治療に対する反応(総症状スコアの 30%を超える低下,消化管の好酸球数の 75%を超える減少),総症状スコアの変化率とした.

結 果

無作為化された 65 例のうち,43 例が AK002 の投与,22 例がプラセボの投与に割り付けられた.消化管の好酸球数の平均変化率は,AK002 統合群では -86%であったのに対し,プラセボ群では 9%であった(差の最小二乗平均 -98 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] -121~-76,P<0.001).治療に対する反応は,AAK002 の投与を受けた患者の 63%,プラセボの投与を受けた患者の 5%に認められた(差 58 パーセントポイント,95% CI 36~74,P<0.001).総症状スコアの平均変化率は AK002 の投与を受けた患者で -48%,プラセボの投与を受けた患者で -22%であった(差の最小二乗平均 -26 パーセントポイント,95% CI -44~-9,P=0.004).AK002 に伴う有害事象は,AK002 のほうが軽度~中等度の注入に伴う反応が発現した患者の割合が高かった(AK002 統合群 60%,プラセボ群 23%)ことを除いて,プラセボと同程度であった.

結 論

好酸球性胃腸炎または好酸球性十二指腸炎の患者において,AK002 は消化管の好酸球数と症状を減少させた.注入に伴う反応は,AK002 のほうがプラセボよりも多かった.(アラコス社から研究助成を受けた.ENIGMA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号NCT03496571)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 1624 - 34. )