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December 3, 2020 Vol. 383 No. 23

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重度の貧血の退院後管理におけるマラリアの化学予防
Malaria Chemoprevention in the Postdischarge Management of Severe Anemia

T.K. Kwambai and Others

背景

アフリカのマラリア蔓延地域で,重度の貧血で入院した小児は退院後 6 ヵ月以内の再入院と死亡のリスクが高い.この期間を標的とする予防戦略は存在しない.

方 法

ケニアとウガンダの 9 病院で多施設共同 2 群無作為化プラセボ対照試験を行い,重度の貧血で入院していた 5 歳未満の小児に 3 ヵ月間のマラリアの化学予防を行うことで,退院後の障害と死亡を減少させることができるかどうかを検討した.全例が,入院中に重度の貧血に対する標準治療を受け,退院時にアルテメテル/ルメファントリンの 3 日間の投与を受けた.退院後 2 週の時点で,小児をジヒドロアルテミシニン(dihydroartemisinin)/ピペラキン(piperaquine)を投与する群(化学予防群)とプラセボを投与する群に無作為に割り付け,退院後 2 週,6 週,10 週に 3 日間投与した.患児を退院後 26 週間追跡した.主要転帰は,無作為化から退院後 6 ヵ月までの,原因を問わない 1 回以上の再入院,または死亡とした.条件付きリスクセットのモデルを作成し,Prentice–Williams–Peterson の total-time 法を用いて再発イベントのハザード比を算出した.

結 果

2016 年 5 月~2018 年 5 月に患児 1,049 例を無作為化し,524 例を化学予防群に,525 例をプラセボ群に割り付けた.3~26 週目の期間に,再入院または死亡のイベントは化学予防群で 184 件,プラセボ群で 316 件発生した(ハザード比 0.65,95%信頼区間 [CI] 0.54~0.78,P<0.001).化学予防群の再入院または死亡の発生率がプラセボ群よりも低かった期間は介入期間(3~14 週)に限られ(ハザード比 0.30,95% CI 0.22~0.42),その後(15~26 週)は持続しなかった(ハザード比 1.13,95% CI 0.87~1.47).ジヒドロアルテミシニン/ピペラキンに起因する重篤な有害事象はなかった.

結 論

マラリアの感染拡大地域で,重度の貧血に対する治療を受けてまもない小児に,退院後 3 ヵ月間,ジヒドロアルテミシニン/ピペラキンの月 1 回投与によるマラリアの化学予防を行ったところ,退院後の死亡または原因を問わない再入院がプラセボ群よりも多く予防された.(ノルウェー研究評議会,米国疾病管理予防センターから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02671175)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 2242 - 54. )