December 31, 2020 Vol. 383 No. 27
UBA1 の体細胞変異と重症成人発症型自己炎症性疾患
Somatic Mutations in UBA1 and Severe Adult-Onset Autoinflammatory Disease
D.B. Beck and Others
成人発症の炎症症候群は,重複する臨床像で発症することが多い.ユビキチン関連遺伝子の変異は,自己炎症性疾患に関与することが以前から示唆されており,新しい疾患を定義する可能性がある.
末梢血のエクソームシーケンスデータの解析を臨床表現型および遺伝様式とは独立に行い,ユビキチン関連遺伝子における有害変異を同定した.サンガー法,免疫ブロット法,免疫組織化学的検査,フローサイトメトリー,トランスクリプトームプロファイリング,サイトカインプロファイリングを行った.CRISPR-Cas9 でゲノム編集したゼブラフィッシュを in vivo モデルとして用い,遺伝子の機能を評価した.
ユビキチン化を開始させる代表的な E1 酵素である,UBA1 のメチオニン-41(p.Met41)に影響する体細胞変異を有する男性 25 例を同定した.(UBA1 遺伝子は X 染色体上に存在する.) そのような患者では,成人期後期に,多くは致死的な治療抵抗性の炎症症候群を発症し,発熱,血球減少,骨髄前駆細胞および赤血球前駆細胞の特徴的な空胞,骨髄異形成,皮膚および肺の好中球性炎症,軟骨炎,血管炎がみられる.この 25 例では,大多数が炎症症候群(再発性多発軟骨炎,スイート症候群,結節性多発動脈炎,巨細胞性動脈炎のいずれか)または血液疾患(骨髄異形成症候群または多発性骨髄腫),あるいはその両方の臨床基準を満たしていた.変異は,末梢血骨髄細胞を含む造血幹細胞の半数以上に認められたが,リンパ球や線維芽細胞には認められなかった.p.Met41 に影響する変異により,UBA1 に通常存在する細胞質アイソフォームが消失し,p.Met67 を翻訳開始点とする触媒活性の低下した新規アイソフォームが発現した.変異のある末梢血細胞では,ユビキチン化の低下と自然免疫経路の活性化が認められた.ゼブラフィッシュで UBA1 の細胞質アイソフォームのホモログをノックアウトすると,全身性炎症が引き起こされた.
遺伝子型に基づくアプローチを用いて,われわれは一見関連性のない成人発症の炎症症候群同士を関連付ける疾患を同定した.この疾患を,VEXAS(空胞,E1 酵素,X 連鎖,自己炎症性,体細胞)症候群と名付けた.(米国国立衛生研究所 所内研究プログラム,EU ホライズン 2020 研究・イノベーションプログラムから研究助成を受けた.)