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December 31, 2020 Vol. 383 No. 27

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慢性硬膜下血腫に対するデキサメタゾンの試験
Trial of Dexamethasone for Chronic Subdural Hematoma

P.J. Hutchinson and Others

背景

慢性硬膜下血腫は頻度の高い神経障害であり,とくに高齢者に多く認められる.慢性硬膜下血腫患者の転帰に対するデキサメタゾンの効果は十分に検討されていない.

方 法

英国で,成人の症候性慢性硬膜下血腫患者を対象に多施設共同無作為化試験を行った.患者を,デキサメタゾンの経口投与を 1 日 2 回 8 mg で開始し,2 週間かけて漸減する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で割り付けた.外科的に血腫を除去するかの判断は,治療にあたった臨床医が行った.主要転帰は,無作為化後 6 ヵ月の時点での修正 Rankin スケール(0 [症状なし]~6 [死亡])のスコアが,良好な転帰を示す 0~3 であることとした.

結 果

2015 年 8 月~2019 年 11 月に,748 例が無作為化後に試験に組み入れられ,375 例がデキサメタゾン群,373 例がプラセボ群に割り付けられた.患者の平均年齢は 74 歳であり,94%が初回入院中に血腫除去術を受け,両群の 60%は入院時の修正 Rankin スケールスコアが 1~3 であった.試験参加への同意を撤回したか,追跡不能となった患者を除外した 680 例の修正 intention-to-treat 解析で,良好な転帰が報告された割合は,デキサメタゾン群では 341 例中 286 例(83.9%),プラセボ群では 339 例中 306 例(90.3%)であった(差-6.4 パーセントポイント [95%信頼区間 -11.4~-1.4] でプラセボ群のほうが良好,P=0.01).データを入手しえた患者のうち,硬膜下血腫の再発のために再手術が行われた患者は,デキサメタゾン群の 349 例中 6 例(1.7%)とプラセボ群の 350 例中 25 例(7.1%)であった.有害事象はデキサメタゾン群のほうがプラセボ群よりも多かった.

結 論

症候性慢性硬膜下血腫を有する成人では,その多くが初回入院中に血腫除去術を受けたが,デキサメタゾン投与を受けた患者はプラセボ投与を受けた患者と比較して,6 ヵ月の時点での良好な転帰の報告が少なく,有害事象が多かった.しかし再手術はデキサメタゾン群のほうが少なかった.(英国国立医療研究機構 医療技術評価プログラムから研究助成を受けた.Dex-CSDH 試験:ISRCTN 登録番号 ISRCTN80782810)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 2616 - 27. )