妊娠中の RS ウイルスワクチン接種と乳児における効果
Respiratory Syncytial Virus Vaccination during Pregnancy and Effects in Infants
S.A. Madhi and Others
RS ウイルス(RSV)は乳児における重症下気道感染症の主な原因であり,最重症例はより月齢の低い乳児に集中している.
妊娠 28 週 0 日~36 週 0 日で,RSV の流行期が始まる頃に出産予定日を迎える健康な妊娠女性を,RSV 融合(F)蛋白ナノ粒子ワクチンを単回筋肉内投与する群とプラセボを投与する群に,全体で約 2:1 の割合で無作為に割り付けた.出生した児を,下気道感染症に関連する転帰の評価のために 180 日間,安全性評価のために 364 日間追跡した.主要エンドポイントは,生後 90 日までの RSV に関連する医学的に重要な下気道感染症とし,主要エンドポイントに対するワクチンの有効性の主要解析を児の per-protocol 集団で行った(事前に規定した達成基準は,97.52%信頼区間 [CI]の下限が 30%以上).
妊娠女性 4,636 例が無作為化され,生児出産は 4,579 件あった.生後 90 日までに RSV に関連する医学的に重要な下気道感染症が認められた児の割合は,ワクチン群で 1.5%,プラセボ群で 2.4%であった(ワクチンの有効率 39.4%,97.52% CI -1.0~63.7,95% CI 5.3~61.2).重度の低酸素血症を伴う RSV 関連下気道感染症を発症した児の割合はそれぞれ 0.5%と 1.0%(ワクチンの有効率 48.3%,95% CI -8.2~75.3),RSV 関連下気道感染症で入院した児の割合は 2.1%と 3.7%(ワクチンの有効率 44.4%,95% CI 19.6~61.5)であった.妊娠女性における局所注射部位反応はワクチン群のほうがプラセボ群よりも頻度が高かったが(40.7% 対 9.9%),その他の有害事象が発現した割合は 2 群で同程度であった.
妊娠女性に対する RSV F 蛋白ナノ粒子ワクチンの接種は,児の生後 90 日までの RSV に関連する医学的に重要な下気道感染症に対するワクチンの有効性の,事前に規定した達成基準を満たさなかった.乳児の RSV 関連呼吸器疾患におけるその他のエンドポイントイベントへの利益の可能性が示唆されたことから,さらなる研究が必要とされる.(ノババックス社,ビル&メリンダ・ゲイツ財団から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02624947)