反復性急性中耳炎に対する鼓膜換気チューブ留置術と薬物療法との比較
Tympanostomy Tubes or Medical Management for Recurrent Acute Otitis Media
A. Hoberman and Others
反復性急性中耳炎の小児に対する鼓膜換気チューブ留置術に関して,公式の推奨内容は一致していない.
急性中耳炎のエピソードが 6 ヵ月間に 3 回以上発生している,または 12 ヵ月間に 4 回以上発生しそのうち少なくとも 1 回は 6 ヵ月以内に発生している生後 6~35 ヵ月の小児を,鼓膜換気チューブ留置術群と,エピソード発生時に抗菌薬を投与する薬物療法群に無作為に割り付けた.主要評価項目は,2 年間における人年あたりの急性中耳炎エピソード数(発生率)の平均とした.
主解析とした intention-to-treat 解析では,2 年間における人年あたりの急性中耳炎エピソードの発生率(±SE)は,鼓膜換気チューブ群で 1.48±0.08,薬物療法群で 1.56±0.08 であった(P=0.66).鼓膜換気チューブ群の患児の 10%が鼓膜換気チューブ留置術を受けず,薬物療法群の患児の 16%が親の希望で鼓膜換気チューブ留置術を受けたことから,per-protocol 解析を行ったところ,エピソード発生率はそれぞれ 1.47±0.08,1.72±0.11 となった.主解析の副次的評価項目については,結果にばらつきがあった.鼓膜換気チューブ留置術のほうが良好であった項目は,急性中耳炎の初回エピソードまでの期間,エピソードに関連するいくつかの臨床的指標,治療失敗の基準を満たす患児の割合であった.薬物療法のほうが良好であった項目は,耳漏がみられた日の累積日数であった.大きな差が認められなかった項目は,急性中耳炎エピソードの頻度分布,重症と判定されたエピソードの割合,呼吸器検体から分離される菌における抗菌薬耐性などであった.試験に関連する有害事象は,副次的評価項目に含まれるものに限られていた.
反復性急性中耳炎を有する生後 6~35 ヵ月の小児において,2 年間における急性中耳炎エピソードの発生率は,鼓膜換気チューブ留置術を施行した場合のほうが薬物療法を行った場合よりも有意に低くはなかった.(米国国立聴覚・伝達障害研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02567825)