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January 28, 2021 Vol. 384 No. 4

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間質性肺疾患による肺高血圧症に対するトレプロスチニル吸入
Inhaled Treprostinil in Pulmonary Hypertension Due to Interstitial Lung Disease

A. Waxman and Others

背景

間質性肺疾患患者の肺高血圧症の治療法として現在承認されているものはない.この病態の患者に対する,トレプロスチニル吸入の安全性と有効性は明らかにされていない.

方 法

16 週間の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験で,間質性肺疾患と肺高血圧症(右心カテーテル検査で確認)を有する患者を登録した.患者を,超音波振動式ネブライザーによるトレプロスチニル吸入を 1 回あたり最大 12 吸入(計 72 mg)で 1 日 4 回行う群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で割り付けた.主要有効性エンドポイントは,6 分間最大歩行距離のベースラインから 16 週の時点までの変化量における群間差とした.副次的エンドポイントは,16 週の時点での脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体 N 端フラグメント(NT-proBNP)値の変化率,臨床的増悪までの時間などとした.

結 果

326 例が無作為化され,163 例がトレプロスチニル吸入群,163 例がプラセボ群に割り付けられた.患者背景は 2 群で類似していた.16 週の時点で,6 分間歩行距離のベースラインからの変化量におけるトレプロスチニル群とプラセボ群の最小二乗平均差は 31.12 m(95%信頼区間 [CI] 16.85~45.39)であった(P<0.001).NT-proBNP 値は,トレプロスチニル吸入群ではベースラインから 15%低下したのに対し,プラセボ群では 46%上昇した(治療率 0.58,95% CI 0.47~0.72,P<0.001).臨床的増悪は,トレプロスチニル群では 37 例(22.7%)に認められたのに対し,プラセボ群では 54 例(33.1%)に認められた(ハザード比 0.61,95% CI 0.40~0.92,log-rank 検定で P=0.04).有害事象は咳嗽,頭痛,呼吸困難,めまい,悪心,疲労,下痢の順に多かった.

結 論

間質性肺疾患による肺高血圧症の患者では,トレプロスチニル吸入により,6 分間歩行試験で評価した運動耐容能がプラセボと比較してベースラインから改善した.(ユナイテッド・セラピューティクス社から研究助成を受けた.INCREASE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02630316)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 325 - 34. )