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February 25, 2021 Vol. 384 No. 8

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統合失調症に対するムスカリン性コリン受容体作動薬と末梢性拮抗薬
Muscarinic Cholinergic Receptor Agonist and Peripheral Antagonist for Schizophrenia

S.K. Brannan and Others

背景

ムスカリン受容体作動薬キサノメリン(xanomeline)には抗精神病作用があり,ドパミン受容体遮断作用はないもののコリン作動性の有害事象を引き起こす.トロスピウム(trospium)は,末梢に限定されたムスカリン受容体拮抗薬であり,キサノメリンの末梢性コリン作動性作用を減弱させる.統合失調症患者にキサノメリンとトロスピウムを併用した場合の有効性と安全性は明らかにされていない.

方 法

二重盲検第 2 相試験で,統合失調症患者を,キサノメリン・トロスピウムを 1 日 2 回,5 週間投与する群(1 回量を最大でキサノメリン 125 mg,トロスピウム 30 mg まで増量)と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,陽性・陰性症状評価尺度(PANSS;30~210 で,スコアが高いほど統合失調症の症状が重度であることを示す)の総スコアのベースラインから 5 週目までの変化量とした.副次的エンドポイントは,PANSS 陽性症状サブスコアの変化量,臨床全般印象–重症度(CGI-S)尺度スコア(1~7 で,スコアが高いほど疾患が重度であることを示す),PANSS 陰性症状サブスコアの変化量,PANSS Marder 陰性症状サブスコアの変化量,CGI-S スコア 1 または 2 の効果が認められた患者の割合とした.

結 果

182 例が組み入れられ,90 例がキサノメリン・トロスピウム群,92 例がプラセボ群に割り付けられた.ベースラインのPANSS 総スコアは,キサノメリン・トロスピウム群 97.7,プラセボ群 96.6 であった.ベースラインから 5 週目までの変化量は,キサノメリン・トロスピウム群で -17.4 ポイント,プラセボ群で -5.9 ポイントであった(最小二乗平均差 -11.6 ポイント,95%信頼区間-16.1~-7.1,P<0.001).副次的エンドポイントの結果は,CGI-S 上の効果が認められた患者の割合を除き,キサノメリン・トロスピウム群のほうがプラセボ群よりも有意に良好であった.キサノメリン・トロスピウム群で頻度の高かった有害事象は,便秘,悪心,口渇,消化不良,嘔吐であった.眠気,体重増加,不穏状態,錐体外路症状の発現率は,2 群で同程度であった.

結 論

5 週間の試験で,キサノメリン・トロスピウムはプラセボと比較して PANSS 総スコアを大幅に低下させたが,コリン作動性・抗コリン作動性の有害事象を伴った.統合失調症患者におけるキサノメリン・トロスピウムの有効性と安全性を明らかにするためには,より大規模かつ長期の試験を行う必要がある.(カルナ・セラピューティクス社,ウェルカムトラストから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03697252)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 717 - 26. )