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March 4, 2021 Vol. 384 No. 9

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肝腎症候群 1 型の治療のためのテルリプレシンとアルブミンの併用
Terlipressin plus Albumin for the Treatment of Type 1 Hepatorenal Syndrome

F. Wong and Others

背景

血管収縮薬であるテルリプレシン(terlipressin)は,世界の多くの地域で肝腎症候群 1 型(HRS-1)の治療に使用されており,欧州では臨床診療ガイドラインに記載されている.

方 法

HRS-1 の成人を対象として,テルリプレシンとアルブミンの併用の有効性と安全性を確認する第 3 相試験を行った.対象を,テルリプレシン群とプラセボ群に 2:1 の割合で無作為に割り付け,最長 14 日間投与した.両群にアルブミンの併用を強く推奨した.主要エンドポイントは HRS の改善が確認されることとし,2 時間以上の間隔をあけて測定した血清クレアチニン値が 2 回連続で 1.5 mg/dL 以下であり,投与終了後 10 日間以上腎代替療法を行わずに生存していることと定義した.事前に規定した 4 つの副次的エンドポイントは,多重比較を説明するために Hochberg 法を用いて解析した.

結 果

300 例が無作為化され,199 例がテルリプレシン群,101 例がプラセボ群に割り付けられた.HRS の改善の確認は,テルリプレシン群の 63 例(32%),プラセボ群の 17 例(17%)で報告された(P=0.006).事前に規定した副次的エンドポイントについては,投与開始後 14 日間に血清クレアチニン値が 1 回でも 1.5 mg/dL 以下となることと定義した HRS の改善は,テルリプレシン群の 78 例(39%)とプラセボ群の 18 例(18%)で報告され(P<0.001),30 日目まで持続した,腎代替療法を必要としない HRS の改善はそれぞれ 68 例(34%)と 17 例(17%)(P=0.001),全身性炎症反応症候群合併患者(テルリプレシン群 84 例,プラセボ群 48 例)における HRS の改善はそれぞれ 31 例(37%)と 3 例(6%)(P<0.001),30 日目まで持続した,再発のない HRS の改善の確認はそれぞれ 52 例(26%)と 17 例(17%)で報告された(P=0.08).90 日の時点で,肝移植はテルリプレシン群の 46 例(23%)とプラセボ群の 29 例(29%)に行われており,テルリプレシン群の 101 例(51%)とプラセボ群の 45 例(45%)が死亡していた.腹痛,悪心,下痢,呼吸不全などの有害事象は,テルリプレシン群のほうがプラセボ群よりも多かった.呼吸障害による 90 日以内の死亡は,テルリプレシン群の 22 例(11%)とプラセボ群の 2 例(2%)に発生した.

結 論

肝硬変と HRS-1 を有する成人を対象とした試験で,テルリプレシンはプラセボよりも腎機能の改善に有効であったが,呼吸不全などの重篤な有害事象を伴った.(マリンクロット ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.CONFIRM 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02770716)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 818 - 28. )