重症左横隔膜ヘルニアに対する胎児手術の無作為化試験
Randomized Trial of Fetal Surgery for Severe Left Diaphragmatic Hernia
J.A. Deprest and Others
胎児鏡下気管閉塞術(FETO)は,孤発性先天性左横隔膜ヘルニアにより重度の肺低形成をきたした胎児の生存率向上との関連が観察研究で示されているが,無作為化試験のデータが不足している.
FETO およびその他の出生前手術の経験を有する施設で行った非盲検試験で,重症の孤発性先天性左横隔膜ヘルニアを有する児の単胎妊娠例を,妊娠 27~29 週の時点で FETO を行う群と,待期的治療を行う群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.いずれの治療後も標準化された出生後治療を行った.主要転帰は新生児集中治療室(NICU)生存退室とした.優越性に関する中間解析を 5 回行うことを事前に規定し,群逐次デザインを用いた.最大サンプルサイズを 116 例とした.
3 回目の中間解析後,有効性が示されたため試験は早期に中止された.80 例を対象とした intention-to-treat 解析では,NICU 生存退室率は FETO 群で 40%(40 例中 16 例)であったのに対し,待期的治療群では 15%(40 例中 6 例)であった(相対リスク 2.67,95%信頼区間 [CI] 1.22~6.11,両側 P=0.009).生後 6 ヵ月までの生存率は,NICU 生存退室率と一致した(相対リスク 2.67,95% CI 1.22~6.11).早期前期破水の発生率は FETO 群の女性のほうが待期的治療群の女性よりも高く(47% 対 11%,相対リスク 4.51,95% CI 1.83~11.9),早産の発生率も同様であった(75% 対 29%,相対リスク 2.59,95% CI 1.59~4.52).胎児鏡下バルーン抜去時の胎盤裂傷による緊急分娩後に新生児 1 例が死亡し,バルーン抜去の失敗により新生児 1 例が死亡した.試験中止後にデータが得られた 11 例を追加した解析では,NICU 生存退室率は FETO 群で 36%,待期的治療群で 14%であった(相対リスク 2.65,95% CI 1.21~6.09).
重症孤発性先天性左横隔膜ヘルニアを有する胎児において,在胎 27~29 週の時点で FETO を行った場合,NICU 生存退室に関して待期的治療を上回る有意な利益が得られ,この利益は生後 6 ヵ月まで維持された.FETO により,早期前期破水と早産のリスクが上昇した.(欧州委員会ほかから研究助成を受けた.TOTAL 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01240057)