November 4, 2021 Vol. 385 No. 19
人種を用いない新規のクレアチニン値に基づく GFR 推算式とシスタチン C 値に基づく GFR 推算式
New Creatinine- and Cystatin C–Based Equations to Estimate GFR without Race
L.A. Inker and Others
血清クレアチニン値または血清シスタチン C 値を用いた推算糸球体濾過量(eGFR)の現行の推算式には,実測 GFR を推算するために年齢,性,人種が組み込まれている.しかし,eGFR 推算式における人種は,社会的構成概念であって生物学的構成概念ではない.
2 つの開発データセットのデータを用いて,人種を除外した新規の eGFR 推算式を開発した:血清クレアチニン値を用いた研究 10 件(8,254 例,黒人 31.5%),血清クレアチニン値と血清シスタチン C 値の両方を用いた研究 13 件(5,352 例,黒人 39.7%).研究 12 件(4,050 例,黒人 14.3%)から成る検証データセットにより,実測 GFR に対する新規の eGFR 推算式の精度を比較した.現行の推算式と新規の推算式を用いて,米国成人の標本における慢性腎臓病(CKD)の有病率と GFR のステージを推定した.
検証データセットでは,年齢,性,人種を組み込んだ,クレアチニン値を用いた現行の推算式により,黒人の実測 GFR は過大推算されたが(eGFR と実測 GFR の差の中央値 3.7 mL/分/1.73 m2 体表面積,95%信頼区間 [CI] 1.8~5.4),非黒人ではその程度はより小さかった(差の中央値 0.5 mL/分/1.73 m2,95% CI 0.0~0.9).クレアチニン値を用いた現行の推算式から黒人の補正を外した場合,黒人の実測 GFR は過小推算された(差の中央値 7.1 mL/分/1.73 m2,95% CI 5.9~8.8).年齢と性を組み込み人種を除外した,クレアチニン値を用いた新規の推算式では,実測 GFR は黒人では過小推算されたが(差の中央値 3.6 mL/分/1.73 m2,95% CI 1.8~5.5),非黒人では過大推算された(差の中央値 3.9 mL/分/1.73 m2,95% CI 3.4~4.4).クレアチニン値を用いたすべての推算式では,eGFR が実測 GFR の±30%以内であった割合は,黒人も非黒人も 85%以上であった.人種を除外したクレアチニン値–シスタチン C 値を用いた新規の推算式は,クレアチニン値を用いた新規の推算式と比較して精度が高く,人種群間の差が小さかった.クレアチニン値を用いた現行の推算式と比較して,クレアチニン値を用いた新規の推算式では CKD の有病率は黒人では高く推定され,非黒人では同程度か低く推定されたが,クレアチニン値–シスタチン C 値を用いた新規の推算式では,このような影響は認められなかった.
クレアチニン値とシスタチン C 値の両方を用いた,人種を除外した新規の eGFR 推算式は,クレアチニン値とシスタチン C 値のいずれか一方のみを用いた,人種を除外した新規の推算式と比較して精度が高く,黒人参加者と非黒人参加者との差が小さかった.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所から研究助成を受けた.)