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November 4, 2021 Vol. 385 No. 19

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慢性腎臓病における人種,遺伝的祖先,腎機能の推定
Race, Genetic Ancestry, and Estimating Kidney Function in CKD

C. Hsu and Others

背景

糸球体濾過量(GFR)の推算式に人種を組み込むことについては議論がある.人種を用いずに同程度の精度を得るために使用できる代替式が必要である.

方 法

慢性腎臓病の成人を対象とした大規模全国研究において,自己申告の人種,遺伝的祖先マーカー,血清クレアチニン値,血清シスタチン C 値,24 時間尿中クレアチニン値を含むデータが収集された参加者 1,248 例のベースラインデータの横断的解析を行った.

結 果

現行の GFR 推算式を用いた場合,黒人と申告した参加者では,人種を除外したモデルのほうが,人種が組み込まれたモデルよりも GFR が過小推算され(実測 GFR と推算 GFR の差の中央値 3.99 mL/分/1.73 m2 体表面積,95%信頼区間 [CI] 2.17~5.62),精度が低いこと(推算 GFR が実測 GFR の 10%以内である割合 [P10] 31%,95% CI 24~39)が判明した(人種が組み込まれたモデルにおける差の中央値 1.11 mL/分/1.73 m2,95% CI -0.29~2.54;P10 42%,95% CI34~50).人種の代わりに遺伝的祖先データを組み込んだ場合の推算 GFR は同等の結果であった(差の中央値 1.33 mL/分/1.73 m2,95% CI -0.12~2.33;P10 42%,95% CI 34~50).自己申告の人種および遺伝的祖先によって異なる,GFR 物質以外の血清クレアチニン値の規定因子(体組成値,尿中クレアチニン排泄量など)を組み込んでも,血清クレアチニン値を用いた GFR 推算式から人種(または祖先)を除外することで生じる誤分類は解消されなかった.一方,シスタチン C 値を用いて GFR を推算する場合,黒人の参加者で,同等の統計的不偏性(差の中央値 0.33 mL/分/1.73 m2,95% CI -1.43~1.92),および同等の精度(P10 41%,95% CI 34~49)の推算値を得るために,人種または祖先を組み込む必要はなかった.

結 論

GFR の推算に,人種(または遺伝的祖先)を組み込まずに血清クレアチニン値を用いた場合には系統的な誤分類が生じ,GFR 物質以外の,多数の血清クレアチニン値の規定因子を考慮しても解消することはできなかった.シスタチン C 値を用いて GFR を推算すると,同等の結果が得られるとともに,人種に基づく現行のアプローチによる負の影響は消失した.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 1750 - 60. )