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November 18, 2021 Vol. 385 No. 21

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血友病 A に対する AAV 遺伝子導入後複数年に及ぶ第 VIII 因子発現
Multiyear Factor VIII Expression after AAV Gene Transfer for Hemophilia A

L.A. George and Others

背景

血友病 A 患者の遺伝子治療の目標は,出血傾向を改善させられる長期かつ安定した第 VIII 因子発現を,最小用量のベクターで安全に誘導することである.

方 法

第 1・2 相試験で,血友病 A の男性 18 例に,肝細胞で第 VIII 因子を発現させるための,試験段階のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(SPK-8011)を注入した.患者を 4 つの用量コホートに組み入れ,最小用量コホートには 5×1011 ベクターゲノム(vg)/kg 体重,最大用量コホートには 2×1012 vg/kg を投与した.一部の患者には,AAV カプシド免疫応答の予防または治療のために,ベクター投与後 52 週以内にグルココルチコイド(ステロイド)を投与した.試験の目的は,SPK-8011 の安全性と予備的有効性の評価,第 VIII 因子の発現と持続性の評価などであった.

結 果

安全性観察期間の中央値は 36.6 ヵ月(範囲 5.5~50.3)であった.治療関連有害事象は 8 例に 33 件発現し,内訳は 17 件がベクター関連でうち 1 件は重篤な有害事象,16 件はステロイド関連であった.2 例で,第 VIII 因子発現が完全に消失した.これは,免疫抑制療法に感受性を示さない,抗 AAV カプシド細胞性免疫応答が生じたためであった.残りの 16 例では第 VIII 因子発現が持続した.このうち 12 例では,追跡期間が 2 年を超え,凝固一段法では第 VIII 因子活性の明らかな経時的低下は認められなかった(第 VIII 因子活性の平均 [±SD]:ステロイドを投与していなかった 26~52 週では正常値の 12.9±6.9% 対 ベクター投与後の 52 週よりあとでは正常値の 12.0±7.1%,マッチさせたペアの差の 95%信頼区間 [CI] -2.4~0.6).出血の年間発生率は 91.5%(95% CI 88.8~94.1)低下した(発生率の中央値:ベクター投与前 8.5 件/年 [0~43.0] 対 投与後 0.3 件/年 [0~6.5]).

結 論

SPK-8011 の投与を受けた 18 例中 16 例で,第 VIII 因子発現が持続したことにより,定期補充療法の中止と出血エピソードの減少がもたらされた.重大な安全性の懸念は報告されなかった.(スパーク セラピューティクス社,米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03003533,NCT03432520)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 1961 - 73. )