November 25, 2021 Vol. 385 No. 22
フォン・ヒッペル–リンドウ病の腎細胞癌に対するベルズティファン
Belzutifan for Renal Cell Carcinoma in von Hippel–Lindau Disease
E. Jonasch and Others
フォン・ヒッペル–リンドウ(VHL)病の患者は,VHL 遺伝子の発現抑制と,転写因子である低酸素誘導因子 2α(HIF-2α)の恒常的活性化のために腎細胞癌の発生率が高い.
第 2 相非盲検単群試験で,VHL 病に伴う腎細胞癌の患者に,HIF-2α阻害薬ベルズティファン(belzutifan)(MK-6482,旧名称 PT2977)を 120 mg/日の用量で経口投与した場合の有効性と安全性を検討した.主要エンドポイントは客観的奏効(完全奏効または部分奏効)とし,独立中央画像判定委員会が固形癌治療効果判定基準(RECIST)バージョン 1.1 に基づいて評価した.腎細胞癌以外の腫瘍を有する患者におけるベルズティファンの効果と,安全性も評価した.
追跡期間中央値 21.8 ヵ月(範囲 20.2~30.1)の時点で,客観的奏効が得られた腎細胞癌患者の割合は 49%(95%信頼区間 36~62)であった.奏効は,膵病変を有する患者(61 例中 47 例 [77%])や,中枢神経系血管芽腫を有する患者(50 例中 15 例 [30%])においても確認された.ベースラインで網膜血管芽腫を有していた 12 例で評価しえた 16 眼では,すべて(100%)が改善と分類された.とくに頻度が高かった有害事象は,貧血(患者の 90%)と疲労(66%)であった.7 例が投与を中止し,内訳は 4 例が自発的な中止,1 例が治療関連有害事象(グレード 1 のめまい)による中止,1 例が試験責任医師に病勢進行と評価されたことによる中止であり,1 例は(フェンタニルの急性毒性により)死亡した.
ベルズティファンは,主にグレード 1 および 2 の有害事象と関連し,VHL 病に伴う腎細胞癌の患者と腎細胞癌以外の腫瘍を有する患者において活性を示した.(メルク シャープ&ドーム社ほかから研究助成を受けた.MK-6482-004 試験:ClinicalTrials.gov登録番号 NCT03401788)