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July 1, 2021 Vol. 385 No. 1

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小児多臓器炎症症候群 ― 初回治療と転帰
Multisystem Inflammatory Syndrome in Children — Initial Therapy and Outcomes

M.B.F. Son and Others

背景

小児多臓器炎症症候群(MIS-C)に対する免疫調節薬のリアルワールドでの有効性評価は,治療の指針となる可能性がある.

方 法

MIS-C を呈し,2020 年 3 月 15 日~10 月 31 日の期間に米国の 58 病院の 1 ヵ所に入院した,21 歳未満の入院患者のサーベイランスデータを解析した.免疫グロブリン静注療法(IVIG)+グルココルチコイドによる初回治療(「0 日目」は,MIS-C に対して免疫調節療法を受けた最初の日を示す)の有効性を,IVIG 単独による初回治療の有効性と比較検討した.解析には傾向スコアマッチングと逆確率重み付け法を用い,ベースライン時の MIS-C の重症度と人口統計学的特性で補正した.主要転帰は,2 日目以降の心血管機能障害(左室機能不全,または昇圧薬投与にいたったショックの複合)とした.副次的転帰は主要転帰の各項目,1 日目以降に補助療法(0 日目にグルココルチコイドの投与を受けていなかった患者へのグルココルチコイド投与,生物学的製剤投与,2 回目の IVIG のいずれか)を受けること,2 日目以降の発熱の持続または再発などとした.

結 果

MIS-C 患児 518 例(年齢の中央値 8.7 歳)が 1 種類以上の免疫調節療法を受けた.75%が生来健康であり,9 例が死亡した.傾向スコアでマッチさせた解析では,IVIG+グルココルチコイドによる初回治療(103 例)は,IVIG 単独による初回治療(103 例)よりも,2 日目以降の心血管機能障害のリスクが低いことと関連した(17% 対 31%,リスク比 0.56,95%信頼区間 [CI] 0.34~0.94).複合転帰の各項目のリスクも,IVIG+グルココルチコイドによる治療を受けた患者のほうが低く,左室機能不全はそれぞれ 8%と 17%に発生し(リスク比 0.46,95% CI 0.19~1.15),昇圧薬投与にいたったショックは 13%と 24%に発生した(リスク比 0.54,95% CI 0.29~1.00).補助療法が行われた割合は,IVIG+グルココルチコイドによる治療を受けた患者のほうが IVIG 単独による治療を受けた患者よりも低かったが(34% 対 70%,リスク比 0.49,95% CI 0.36~0.65),発熱のリスクに影響はみられなかった(それぞれ 31%と 40%,リスク比 0.78,95% CI 0.53~1.13).逆確率重み付け解析によって,傾向スコアマッチング解析の結果が確認された.

結 論

MIS-C の小児・思春期児に対する初回治療として,IVIG+グルココルチコイド投与を行った場合,IVIG を単独で行った場合と比較して,新規または持続性の心血管機能障害のリスクが低いことと関連した.(米国疾病管理予防センターから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 23 - 34. )