心筋梗塞に対する FFR ガイド多枝 PCI と血管造影ガイド多枝 PCI との比較
Multivessel PCI Guided by FFR or Angiography for Myocardial Infarction
E. Puymirat and Others
多枝冠動脈疾患を有する ST 上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,非責任病変に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)(完全血行再建)は,責任病変のみの治療よりも優れている.しかし,冠血流予備量比(FFR)ガイド下で行う完全血行再建が,血管造影ガイド下で行う完全血行再建よりも優れているかどうかは明らかにされていない.
多施設共同試験で,STEMI と多枝冠動脈疾患を有し,梗塞関連動脈の PCI が成功した患者を,完全血行再建を FFR ガイド下で行う群と血管造影ガイド下で行う群に無作為に割り付けた.主要転帰は,1 年の時点での全死因死亡,非致死的心筋梗塞,緊急血行再建にいたった予定外入院の複合とした.
非責任病変に留置されたステントの患者 1 人あたりの平均(±SD)本数は,FFR ガイド群 1.01±0.99 本,血管造影ガイド群 1.50±0.86 本であった.追跡期間中に,主要転帰イベントは FFR ガイド群 586 例中 32 例(5.5%)と血管造影ガイド群 577 例中 24 例(4.2%)に発生した(ハザード比 1.32,95%信頼区間 0.78~2.23,P=0.31).死亡は FFR ガイド群の 9 例(1.5%)と血管造影ガイド群の 10 例(1.7%)に発生し,非致死的心筋梗塞はそれぞれ 18 例(3.1%)と 10 例(1.7%),緊急血行再建にいたった予定外入院はそれぞれ 15 例(2.6%)と 11 例(1.9%)に発生した.
完全血行再建を受ける STEMI 患者において,FFR ガイド戦略は,1 年の時点での死亡,心筋梗塞,緊急血行再建のリスクに関して血管造影ガイド戦略を上回る利益をもたらさなかった.しかし,効果の推定値の信頼区間が広かったため,今回の知見は結論的な解釈を導くものではない.(フランス保健省,アボット社から研究助成を受けた.FLOWER-MI 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02943954)