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August 12, 2021 Vol. 385 No. 7

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B.1.617.2 変異株(デルタ株)に対する Covid-19 ワクチンの有効性
Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant

J. Lopez Bernal and Others

背景

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)の B.1.617.2 変異株(デルタ株)が,インドでの症例急増の一因となっている.デルタ株はいまや世界中で検出され,英国では症例が顕著に増加している.この変異株に対する BNT162b2 ワクチンと ChAdOx1 nCoV-19 ワクチンの有効性は不明である.

方 法

症状を訴えたが検査で陰性であった人を対照とする症例対照研究デザイン(test-negative case–control design)を用いて,デルタ株が流行し始めた期間中に,デルタ株または優勢株(B.1.1.7 変異株 [アルファ株])によって引き起こされる有症状の Covid-19 に対するワクチン接種の有効性を推定した.変異株の同定は,全ゲノム解析およびスパイク遺伝子(S)の状態に基づいて行った.イングランドにおける,全ゲノム解析が行われた有症状の Covid-19 症例すべてのデータを用いて,ワクチン接種状態別に各変異株による症例の割合を推定した.

結 果

ワクチン(BNT162b2 または ChAdOx1 nCoV-19)の 1 回接種後の有効性は,デルタ株感染者(30.7%,95%信頼区間 [CI] 25.2~35.7)のほうが,アルファ株感染者(48.7%,95% CI 45.5~51.7)よりも顕著に低かった.各ワクチンについても 1 回接種後の有効性は同程度であった.BNT162b2 ワクチンでは,2 回接種後の有効性はアルファ株感染者で 93.7%(95% CI 91.6~95.3),デルタ株感染者で 88.0%(95% CI 85.3~90.1)であった.ChAdOx1 nCoV-19 ワクチンでは,2 回接種後の有効性はアルファ株感染者で 74.5%(95% CI 68.4~79.4),デルタ株感染者で 67.0%(95% CI 61.3~71.8)であった.

結 論

ワクチンの 2 回接種後の,デルタ株に対する有効性とアルファ株に対する有効性の差はわずかであった.ワクチンの有効性の絶対差は 1 回接種後のほうが顕著であった.今回の知見は,脆弱な集団での 2 回接種者数を最大化するための取組みを支持するものと思われる.(イングランド公衆衛生庁の研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 585 - 94. )