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April 7, 2022 Vol. 386 No. 14

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広範囲急性期脳梗塞に対する血管内治療
Endovascular Therapy for Acute Stroke with a Large Ischemic Region

S. Yoshimura and Others

背景

急性期脳梗塞に対する血管内治療は,脳梗塞の範囲が広い場合には行われないことが多いが,広範囲脳梗塞患者に対して,内科的治療に加えて血管内治療を行った場合の,内科的治療のみを行った場合と比較した効果は十分には検討されていない.

方 法

脳主幹動脈に閉塞を認め, 画像上 Alberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score(ASPECTS)(0~10 の尺度で,値が低いほど梗塞範囲が広い)で 3~5 の範囲にある広範囲脳梗塞を有する患者を対象として,日本で多施設共同非盲検無作為化臨床試験を行った.対象患者を,最終健常確認時刻から 6 時間以内,または FLAIR 画像で早期の変化を認めない場合は 24 時間以内に,内科的治療に加えて血管内治療を行う群と,内科的治療のみを行う群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.両群とも適用がある場合はアルテプラーゼ(0.6 mg/kg 体重)を投与した.主要転帰は,発症 90 日後における修正 Rankin スケールスコア(0~6 の尺度で,スコアが高いほど障害が大きい)が 0~3 であることとした.副次的転帰は,発症 90 日後における修正 Rankin スケールスコアがより良好な転帰を示す方向に分布すること,割付け 48 時間後における米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコア(0~42 の範囲で,スコアが高いほど障害が大きい)が 8 ポイント以上改善することなどとした.

結 果

203 例が無作為化され,101 例が血管内治療群,102 例が内科的治療群に割り付けられた.各群の約 27%がアルテプラーゼの投与を受けた.発症 90 日後における修正 Rankin スケールスコアが 0~3 であった患者の割合は,血管内治療群で 31.0%,内科的治療群で 12.7%であった(相対リスク 2.43,95%信頼区間 [CI] 1.35~4.37,P=0.002).修正 Rankin スケールスコアの分布は,血管内治療のほうが良好であった.割付け 48 時間後における NIHSS スコアの 8 ポイント以上の改善は,血管内治療群の 31.0%と内科的治療群の 8.8%に認められ(相対リスク 3.51,95% CI 1.76~7.00),なんらかの頭蓋内出血はそれぞれ 58.0%と 31.4%に発生した(P<0.001).

結 論

日本からの臨床試験の結果,広範囲脳梗塞患者に血管内治療を内科的治療に加えて行うことで,内科的治療のみを行った場合と比較して機能的転帰が良好であったが,頭蓋内出血が多かった.(公益信託美原脳血管障害研究振興基金,日本脳神経血管内治療学会から研究助成を受けた.RESCUE-Japan LIMIT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03702413)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 386 : 1303 - 13. )