南アフリカにおける人口レベルの免疫とオミクロン株による Covid-19 の重症度
Population Immunity and Covid-19 Severity with Omicron Variant in South Africa
S.A. Madhi and Others
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)の B.1.1.529 変異株(オミクロン株)は,2021 年 11 月 25 日,南アフリカ・ハウテン州ではじめて同定された.オミクロン株が優勢となり,南アフリカは新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の第 4 波を迎えた.ハウテン州における第 4 波より前の SARS-CoV-2 の IgG 血清陽性率に関するデータが必要である.
SARS-CoV-2 の IgG 血清陽性率を明らかにするため,2021 年 10 月 22 日~12 月 9 日にハウテン州で血清疫学的調査を行った.以前の血清疫学的調査(2020 年 11 月~2021 年 1 月に実施)で対象とした家庭にコンタクトをとり,調査集団の変化を補足するため,同じ標本抽出法を用いてコンタクトをとる家庭を 10%増やした.定量分析を用いて乾燥濾紙血検体中の SARS-CoV-2 スパイク蛋白とヌクレオカプシド蛋白に対する IgG を検査した.ハウテン州における Covid-19 の疫学的動向として,パンデミック開始から 2022 年 1 月 12 日までの,症例,入院,記録された死亡,超過死亡なども評価した.
7,010 例から検体を採取した.このうち 1,319 例(18.8%)が Covid-19 ワクチンを接種していた.SARS-CoV-2 の IgG 血清陽性率は,12 歳未満の 56.2%(95%信頼区間 [CI] 52.6~59.7)から,50 歳超の 79.7%(95% CI 77.6~81.5)に及んだ.ワクチン接種者は,未接種者よりも SARS-CoV-2 血清陽性率が高かった(93.1% 対 68.4%).疫学データから,SARS-CoV-2 感染の発生率は,第 4 波では過去の 3 波よりも急速に上昇し,その後低下したことが示された.第 4 波における感染の発生率と,入院,記録された死亡,超過死亡の発生率との関連は,過去の 3 波で認められた割合と比較して弱かった.
ハウテン州では,オミクロン株が優勢となった Covid-19 第 4 波より前に,背景として多数の人が SARS-CoV-2 血清陽性であったことが観察された.疫学データにより,オミクロン株の流行中は,感染と入院・死亡との関連が弱かったことが示された.(ビル&メリンダ・ゲイツ財団から研究助成を受けた.)