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January 6, 2022 Vol. 386 No. 1

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カナダでミフェプリストンが通常の処方で使用可能になった後の中絶の安全性と実施状況
Abortion Safety and Use with Normally Prescribed Mifepristone in Canada

L. Schummers and Others

背景

米国では,ミフェプリストン(mifepristone)は(ミソプロストールとの併用による)薬剤中絶の目的で,「リスク評価・緩和戦略(REMS)」の制限のもとでのみ使用可能であるが,そのような制限を支持するエビデンスはない.カナダでは,2017 年 11 月からミフェプリストンが通常の処方で使用可能となっている.

方 法

カナダ・オンタリオ州の人口ベースの行政データを用いて,ミフェプリストンが使用可能になる前(2012 年 1 月~2016 年 12 月)と,制限なしで使用可能となった後(2017 年 11 月 7 日~2020 年 3 月 15 日)の転帰の発生の動向を,分割時系列解析を用いて比較し,中絶の実施状況,安全性,有効性を評価した.

結 果

中絶件数は,ミフェプリストンが使用可能になる前は195,183 件,制限なしで使用可能となった後は 84,032 件であった.ミフェプリストンが通常の処方で使用可能となった後,中絶率は低下し続けたが,使用可能になる前の動向に基づく予測よりも低下は緩徐であり(15~49 歳の女性住民 1,000 人あたりの年間中絶率の,時系列解析における補正リスク差 1.2,95%信頼区間 [CI] 1.1~1.4),その一方で,内科的処置として行われた中絶の割合は 2.2%から 31.4%へと増加した(補正リスク差 28.8 パーセントポイント,95% CI 28.0~29.7).ミフェプリストンが使用可能になる前の期間と,制限がなくなった期間とで,重度の有害事象の発現率(0.03% 対 0.04%,補正リスク差 0.01 パーセントポイント,95% CI -0.06~0.03),合併症の発生率(0.74% 対 0.69%,補正リスク差 0.06 パーセントポイント,95% CI -0.07~0.18),中絶後に認められた異所性妊娠の頻度(0.15% 対 0.22%,補正リスク差 -0.03 パーセントポイント,95% CI -0.19~0.09)に実質的な変化はなかった.分娩にいたった子宮内妊娠の継続には,わずかな増加が認められた(補正リスク差 0.08 パーセントポイント,95% CI 0.04~0.10).

結 論

ミフェプリストンが通常の処方で使用可能になった後は,使用可能になる前の期間と比較して,中絶率に変化はなく,薬剤による中絶の割合が急速に増加し,有害事象と合併症に変化はなかった.(カナダ国立保健研究機構,女性の健康研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 386 : 57 - 67. )