September 29, 2022 Vol. 387 No. 13
体液貯留を伴う急性非代償性心不全に対するアセタゾラミド
Acetazolamide in Acute Decompensated Heart Failure with Volume Overload
W. Mullens and Others
体液貯留を伴う急性非代償性心不全患者に対して,近位尿細管でのナトリウム再吸収を抑制する炭酸脱水酵素阻害薬であるアセタゾラミドを投与することで,ループ利尿薬の効果が向上し,うっ血解除を促進することが可能かどうかは明らかにされていない.
多施設共同並行群間二重盲検無作為化プラセボ対照試験で,体液貯留の臨床徴候(浮腫,胸水,腹水)を認め,N 末端プロ B 型ナトリウム利尿ペプチド濃度 1,000 pg/mL 超または B 型ナトリウム利尿ペプチド濃度 250 pg/mL 超の急性非代償性心不全患者を,標準化したループ利尿薬の静脈内投与(経口投与での維持用量の 2 倍相当)に加えて,アセタゾラミド(500 mg を 1 日 1 回)を静脈内投与する群と,プラセボを投与する群に割り付けた.無作為化は,左室駆出率(40%以下,40%超)で層別化して行った.主要エンドポイントはうっ血解除の成功とし,無作為化後 3 日以内に体液貯留の徴候がなく,うっ血解除療法強化の適応がないことと定義した.副次的エンドポイントは,3 ヵ月の追跡期間中の全死因死亡または心不全による再入院の複合などとした.安全性も評価した.
519 例が無作為化された.うっ血解除の成功は,アセタゾラミド群の 256 例中 108 例(42.2%)と,プラセボ群の 259 例中 79 例(30.5%)で得られた(リスク比 1.46,95%信頼区間 [CI] 1.17~1.82,P<0.001).全死因死亡または心不全による再入院は,アセタゾラミド群の 256 例中 76 例(29.7%)と,プラセボ群の 259 例中 72 例(27.8%)に発生した(ハザード比 1.07,95% CI 0.78~1.48).アセタゾラミドの投与は,累積尿量と累積尿中ナトリウム排泄量がより多いことに関連し,利尿効果がより良好であることに一致する所見であった.腎機能低下,低カリウム血症,低血圧,有害事象の発現率は,2 群で同程度であった.
急性非代償性心不全患者に対して,ループ利尿薬に加えてアセタゾラミドを投与することで,うっ血解除の成功率が上昇した.(ベルギーヘルスケアナレッジセンターから研究助成を受けた.ADVOR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03505788)