November 17, 2022 Vol. 387 No. 20
カタールの小児および思春期児における Covid-19 ワクチンの防御効果
Covid-19 Vaccine Protection among Children and Adolescents in Qatar
H. Chemaitelly and Others
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対する BNT162b2 ワクチンは,5~11 歳の小児と,12~17 歳の思春期児への使用が承認されているが,抗原量は異なっている.
カタールの小児および思春期児における,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)感染に対する BNT162b2 ワクチンのリアルワールドでの有効性を評価した.ワクチン接種者の全国コホートにおける SARS-CoV-2 感染の発生率を,ワクチン未接種者の全国コホートにおける発生率と比較するため,目標とする無作為化比較試験を模倣する手法(target-trial emulation)を用いた,対照をマッチさせた後ろ向きコホート研究を 3 件行った.1 件目は B.1.1.529 変異株(オミクロン株)流行開始後の 5~11 歳の小児のデータを評価し,2 件目はオミクロン株出現前の 12~17 歳の思春期児のデータを評価し(プレオミクロン研究),3 件目はオミクロン株流行開始後の 12~17 歳の思春期児のデータを評価した.Cox 比例ハザード回帰モデルを用いて関連を推定した.
小児では,オミクロン株感染に対するワクチン 10 μg による初回免疫(2 回接種)の全体的な有効率は 25.7%(95%信頼区間 [CI] 10.0~38.6)であった.有効率は 2 回目の接種直後にもっとも高かったが(49.6%,95% CI 28.5~64.5),その後急速に減弱し,3 ヵ月後には無視しうる程度となった.有効率は 5~7 歳で 46.3%(95% CI 21.5~63.3),8~11 歳で 16.6%(95% CI -4.2~33.2)であった.思春期児では,オミクロン株感染に対するワクチン 30 μg による初回免疫の全体的な有効率は 30.6%(95% CI 26.9~34.1)であったが,多くの思春期児は,何ヵ月も前に 2 回目の接種を受けていた.有効率は 2 回目の接種後経時的に減弱した.有効率は 12~14 歳で 35.6%(95% CI 31.2~39.6),15~17 歳で 20.9%(95% CI 13.8~27.4)であった.プレオミクロン研究では,思春期児における SARS-CoV-2 感染に対するワクチン 30 μg の初回免疫の全体的な有効率は 87.6%(95% CI 84.0~90.4)であり,2 回目の接種後は,比較的緩やかに減弱した.
小児におけるワクチン接種は,オミクロン株感染に対して,小さめの,急速に減弱する防御効果と関連した.思春期児におけるワクチン接種は,より強く,より持続的な防御効果と関連したが,これはおそらく抗原量が多いためである.(ワイル・コーネル医科大学カタール校ほかから研究助成を受けた.)